旅立ち2
砂漠の街ラミンに来たのは、地図で適当に選んだだけ。
私はこの街に来てから、いつ逃げようか考えていた。チャンスはすぐに訪れた。
昼食を食べに、街のレストランに入った。
Γちょっと失礼」
メニューを選んでいるルーに声をかけると、目線はメニュー表のまま、彼は小さく頷いた。
そろりと席を立ち、化粧室の窓から逃げた。
ダッシュで走り、だいぶ距離を取ってから言った。
Γはあ、はあ、ふふん、ここまでくれば…」
Γ何やってんだ?」
すぐ背後から声がかかり、跳び跳ねる。
Γひゃあ!」
Γほら飯食いに戻るぞ。」
腕を掴まれ、秒速でレストランへターン。
それが逃走未遂その1
次に宿を取り、
Γお風呂行ってくる。」
Γ……ああ。」
何か言いたそうな顔のルーは、結局短い返事だけをした。
宿の中にある公衆浴場へ向かい、私は髪を隠す布を巻き直し、途中でこっそり買っておいた男物の服に着替えた。少々チビな私には、男物といっても、男の〈子〉のサイズしか合わなかった。
『ごめん、ルー。お金こんなのに使って。』
おこづかいは、ルーのお財布から。心の中で謝る。まじでごめん。
そうして、私はもう一度逃げた。日が暮れた街を闇と人にまぎれて。
Γきゃあ、助けて!」
横手の路地から女の子の声がした。
Γ気のせい?」
Γやめてー!」
また悲鳴が!何だか既視感。
反射的に声のした方向に走り出した。
人の少ない路地には、暗がりの中で、女の子が男に刃物で脅されていた。首に当てられた刃物を見て、頭に血が昇った。
Γあんた、女の子に何やってる!」
そう、私は今は男の格好。強気で出たらいける気がした、のだ。
次回、男装の色気