優しさと温度4(ルー視点)
俺の両親は、一般的な金髪に青い瞳の姿をしていたらしい。
子供の時に周りの者から聞いた話だから定かではないが。
俺が黒髪で瞳も黒だったから、彼らは驚いたらしい。おそらく親のどちらかの先祖に魔法使いの血が混じっていて、隔世遺伝として俺に受け継がれたのだろう。
両親は困惑したらしい。魔法使いはいつの時代も数が少ない。治癒力はありがたがられるが、得体の知れないものとして概ね忌まれることが多い。
まして、自分たちと色が違うこともあり、気味が悪かったんだろう。
そんな時、リリアが子供の魔法使いを集めていることを知り、これ幸いと俺を渡した。
金と引き換えに。
面倒事がなくなって、金ももらえてホッとしたんじゃないか。
俺は知らずにリリアに、兵器として育てられた。そこらへんのことは、お前も聞いているんだろ?
俺は大量殺人を犯した大罪人だ。
あの時の俺は、リリアを母親だと信じて慕っていた。彼女が喜ぶなら何でもした。両親の話を聞いても、リリアがいるから平気だった。
…自分が洗脳されていることもわかっていた。
それでも良かった。
Γ彼女が手に入れた予知で、俺が最高の魔法使いとなり彼女を殺すと知るまでは。」
Γ……。」
膝に置いた手を拳にして、ミヤコは俯いて聞いている。
Γリリアは、殺される前にと俺を抹殺しようとした。今まで共に過ごした仲間全てに俺を襲わせ、俺は全員を殺した。彼女が俺を殺そうとした時に、ようやく気付いた。俺は…彼女の子でも、愛されてもいないこと。道具に過ぎなかったことをな。」
自嘲気味に俺は嗤った。
Γ抑えていた力を解放した時には、洗脳は解けていた。リリアは最期に、俺を育ててやったのにと叫んでいた。」
ミヤコの頬に額を重ねて言った。
Γ…俺はなぜそれでも生きているのか。リリアを殺した後、死のうとしたがどうしても死ねなかった。自らを攻撃しても、結界が自然に働いてダメだった。…この島を発見したのは偶然だった。死ねないなら、ここで命尽きるまで閉じ籠っていようと思った。ここなら、誰にも干渉されず自由に生きられる。」
そこまで話して、俺は自分の額がミヤコの涙で濡れているのに気付いた。
Γ…ミヤコ。」
俯くミヤコの頬に手を当て、覗きこんでみた。
目から、これでもかと涙を流して、ミヤコが顔を上げた。
Γまた泣かせたな。」
同情して泣いてるのかと思った。
Γるぅ、うっ、ぐすっ」
いきなりミヤコが俺の首に手を伸ばして、膝を立てて俺の顔を抱きこんできた。
Γミ、ヤ…!」
Γル、ルー、生きていてくれてありがとう!死ななくて、良かった!辛かったろうに…、それでも生きて、ルーに逢えて…、私、嬉しい!ありがとう!ありがとう!生きて…!」
ミヤコの柔らかい胸に抱かれて、思わず力が抜けて苦笑した。
まあ、確かに。
Γそうだな。死んでたら、お前に逢えなかった…」
Γうん、うん…ありがとう」
ぎゅうっと一生懸命抱き締められて、俺は息を吐いた。
心が軽くなるようだった。
生まれてきてくれてありがとう、生きていてくれてありがとう…
ミヤコは俺の黒髪を撫でて、泣きながら何度もその言葉を紡いだ。
初めて言われた。
仕方ないな…
俺はミヤコの腰に両手を回して、彼女が満足するまで、じっと動かずにいた。
居心地が良すぎて困った。
次回、まだ甘。