表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/207

優しさと温度4(ルー視点)

俺の両親は、一般的な金髪に青い瞳の姿をしていたらしい。

子供の時に周りの者から聞いた話だから定かではないが。

俺が黒髪で瞳も黒だったから、彼らは驚いたらしい。おそらく親のどちらかの先祖に魔法使いの血が混じっていて、隔世遺伝として俺に受け継がれたのだろう。


両親は困惑したらしい。魔法使いはいつの時代も数が少ない。治癒力はありがたがられるが、得体の知れないものとして概ね忌まれることが多い。

まして、自分たちと色が違うこともあり、気味が悪かったんだろう。


そんな時、リリアが子供の魔法使いを集めていることを知り、これ幸いと俺を渡した。

金と引き換えに。

面倒事がなくなって、金ももらえてホッとしたんじゃないか。

俺は知らずにリリアに、兵器として育てられた。そこらへんのことは、お前も聞いているんだろ?


俺は大量殺人を犯した大罪人だ。

あの時の俺は、リリアを母親だと信じて慕っていた。彼女が喜ぶなら何でもした。両親の話を聞いても、リリアがいるから平気だった。

…自分が洗脳されていることもわかっていた。

それでも良かった。


Γ彼女が手に入れた予知で、俺が最高の魔法使いとなり彼女を殺すと知るまでは。」

Γ……。」


膝に置いた手を拳にして、ミヤコは俯いて聞いている。


Γリリアは、殺される前にと俺を抹殺しようとした。今まで共に過ごした仲間全てに俺を襲わせ、俺は全員を殺した。彼女が俺を殺そうとした時に、ようやく気付いた。俺は…彼女の子でも、愛されてもいないこと。道具に過ぎなかったことをな。」


自嘲気味に俺は嗤った。


Γ抑えていた力を解放した時には、洗脳は解けていた。リリアは最期に、俺を育ててやったのにと叫んでいた。」


ミヤコの頬に額を重ねて言った。


Γ…俺はなぜそれでも生きているのか。リリアを殺した後、死のうとしたがどうしても死ねなかった。自らを攻撃しても、結界が自然に働いてダメだった。…この島を発見したのは偶然だった。死ねないなら、ここで命尽きるまで閉じ籠っていようと思った。ここなら、誰にも干渉されず自由に生きられる。」


そこまで話して、俺は自分の額がミヤコの涙で濡れているのに気付いた。


Γ…ミヤコ。」


俯くミヤコの頬に手を当て、覗きこんでみた。

目から、これでもかと涙を流して、ミヤコが顔を上げた。


Γまた泣かせたな。」


同情して泣いてるのかと思った。


Γるぅ、うっ、ぐすっ」


いきなりミヤコが俺の首に手を伸ばして、膝を立てて俺の顔を抱きこんできた。


Γミ、ヤ…!」

Γル、ルー、生きていてくれてありがとう!死ななくて、良かった!辛かったろうに…、それでも生きて、ルーに逢えて…、私、嬉しい!ありがとう!ありがとう!生きて…!」


ミヤコの柔らかい胸に抱かれて、思わず力が抜けて苦笑した。

まあ、確かに。


Γそうだな。死んでたら、お前に逢えなかった…」

Γうん、うん…ありがとう」


ぎゅうっと一生懸命抱き締められて、俺は息を吐いた。

心が軽くなるようだった。


生まれてきてくれてありがとう、生きていてくれてありがとう…

ミヤコは俺の黒髪を撫でて、泣きながら何度もその言葉を紡いだ。

初めて言われた。


仕方ないな…

俺はミヤコの腰に両手を回して、彼女が満足するまで、じっと動かずにいた。

居心地が良すぎて困った。

次回、まだ甘。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ