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優しさと温度2

Γ傷は跡形も無く消え、体力も回復されたようです。長距離移動にも差し支えないでしょうから、お帰りになられてもいいでしょう。ジーク殿。」


Γこれはどういうことですかな?リュカ様。」


腕の火傷が癒えたのを確認し、椅子に座ったジークはリュカに非難の目を向けた。


Γあの魔法使いが王宮に侵入するとは、あなたの結界も大したものではない。その上、私を護れず怪我を負わせた責任、どうするおつもりか?!」


Γ申し訳ありません。ですが、あれは私よりも上位の魔法使い。私にも力が及ばぬことがあるのです。」


無表情で謝罪するリュカに、ジークは鼻を鳴らした。

全く表情の出ぬ男だ。いつも何を考えているかわからない。


Γそれで…あなたはあの魔法使いを怒らせるようなことを、何かしましたか?」

Γ……何もしていない。」

Γそうですか。」


そうだ。なぜあの魔法使いが怒るのだ。

一言だけ発したあの言葉。あれが本当なら…


Γリュカ様、彼女は連れ去られたままなのですか?」

Γ…ええ。」


これは、使いようによっては…


Γジーク殿。」


口角を上げたリュカが、腕をさっと一振りすると部屋が白く光り、二人を囲んだ。


Γな、何だ?!」

Γ少し内緒話がしたいので、防音の結界を張りました。」


すうっと音もなくリュカがジークに寄り、薄く笑って囁いた。


Γミヤコが、どうやって最高の魔法使いになりえるか…あなたには教えてあげましょう。」


*********************


Γ帰ったのかい?あのうるさいお兄さん。」

Γええ。」


ローレンが書類に目を通しながら、横で書類の分別をしているリュカに聞いた。


Γそれで、どういうことかな?」

Γ何がです?」


手を動かしながら、リュカは知らぬ振りをしている。


Γんー、ミヤコの貞操の危機とか、結界破られたとか、兄さん丸焼きのこととか。」

Γ言い方が、直接的ですね。もう少し上品に。」


ペンを指でくるくる回して、ローレンはリュカを見上げた。


Γねえ、リュカ。なぜ視ていただけ?」

Γ…………悪いようには転がらなかったでしょう?」


目だけを上げて、リュカはローレンを見た。


Γ全ては予知のため?」

Γええ。」

Γ全てはルルカのため?」

Γええ。」


ローレンにだけ見せる、子に向けるような微笑み。そんなリュカの表情に、王はやれやれと肩を竦める。


Γ僕は、リュカのそういう態度が嫌いだ。」

Γそれはそれは。」


回していたペンを止めて、ローレンはにっこり笑った。


Γねえリュカ。」

Γはい。」

Γ僕を裏切ったら、殺すよ?」



次回、翻弄される魔法使い

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