熱と自覚と11
Γ…やめっ」
顎にかかる手を、首を振って払おうとした。すると、その手が私の首を掴んだ。
Γいっそお前を消せば、俺は楽になるか?」
くっと手に力が込められる。人々のイメージする残酷な魔法使いそのままに、ルーは私をいたぶるように薄く笑っていた。
Γうっ…」
息が詰まりかけながら、私は彼を睨んだ。
Γ見かけによらず気の強い。俺が怖くないのか?」
Γ怖く、ないっ。そんなわけ、ないでしょ…はあ」
絞め上げていた手が緩み、大きく息をした。
苦しそうな私を見て、一瞬ルーの動きが止まる。
不器用な人だ。偉そうで…、でも世話好きで、本当は…
Γごほっ、ば、か、ルーのバカ!」
Γ黙れ」
言われたと同時に、今度は話せなくなった。首も動かない。
ルーの指が頬をなで、首筋を撫でてから鎖骨を辿った。擽ったさと得たいの知れない感じに、体がびくっとなる。
ルーの重みが軽くかかって、首にキスが降った。
触れられた所が、熱い。
耳を熱い息が掠め、そのまま甘く噛まれた。
Γ…っ!」
かっと頬が赤く染まり、羞恥でぎゅっと目を瞑る。
触れられても、嫌じゃない。むしろ、その度に体に熱が籠るようだった。でも…
でも、だからこそ嫌だ。
叫びたくても声が出ない。目を開けて、震えながら目だけを動かしてルーを見た。気付いた彼が、唇を押し当てた喉から顔を上げた。
ルーは、笑ってなどいなかった。赤い瞳には、隠しきれない熱と焦りが見えた。
彼は彼なりに必死なんだ。私を繋ぎ止めたくて…
じわりと目に涙が溜まる。
ルー…ルー、私いるよ?ちゃんと側にいるから。
唇をなぞるルーの指が、ぎこちない。
どうしたら、いい?
このままルーの思い通りにはさせられない。そんなことをしたら、もう心から彼と笑い合うことはできない。
ずっと好きでも、心からそれを告げることはできなくなる。
私たちは、まだ何も知らないし、伝え合っていない。
指先に力をいれる。動いて、私の指。
手首を握るルーの手に、少しでいいから触れたら…!
ルーの顔が近付く。その一方的な口づけを、私は受け取らない。そこに私の意志はないのだから。
どうか知って欲しい。
指が僅かに動いた。くっと指を内側に曲げるように意識を集中する。ほんの少しだけ、ルーの親指に触れた。
私は心の中を全てさらけ出すように、その指先に願いを込めた。
ルー、私は…
愛してる、本当は優しいあなたを。とてもとても…
次回、ルーの完落ち