表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/207

熱と自覚と11

Γ…やめっ」


顎にかかる手を、首を振って払おうとした。すると、その手が私の首を掴んだ。


Γいっそお前を消せば、俺は楽になるか?」


くっと手に力が込められる。人々のイメージする残酷な魔法使いそのままに、ルーは私をいたぶるように薄く笑っていた。


Γうっ…」


息が詰まりかけながら、私は彼を睨んだ。


Γ見かけによらず気の強い。俺が怖くないのか?」

Γ怖く、ないっ。そんなわけ、ないでしょ…はあ」


絞め上げていた手が緩み、大きく息をした。

苦しそうな私を見て、一瞬ルーの動きが止まる。


不器用な人だ。偉そうで…、でも世話好きで、本当は…


Γごほっ、ば、か、ルーのバカ!」

Γ黙れ」


言われたと同時に、今度は話せなくなった。首も動かない。

ルーの指が頬をなで、首筋を撫でてから鎖骨を辿った。擽ったさと得たいの知れない感じに、体がびくっとなる。

ルーの重みが軽くかかって、首にキスが降った。

触れられた所が、熱い。

耳を熱い息が掠め、そのまま甘く噛まれた。


Γ…っ!」


かっと頬が赤く染まり、羞恥でぎゅっと目を瞑る。

触れられても、嫌じゃない。むしろ、その度に体に熱が籠るようだった。でも…

でも、だからこそ嫌だ。


叫びたくても声が出ない。目を開けて、震えながら目だけを動かしてルーを見た。気付いた彼が、唇を押し当てた喉から顔を上げた。

ルーは、笑ってなどいなかった。赤い瞳には、隠しきれない熱と焦りが見えた。

彼は彼なりに必死なんだ。私を繋ぎ止めたくて…


じわりと目に涙が溜まる。

ルー…ルー、私いるよ?ちゃんと側にいるから。


唇をなぞるルーの指が、ぎこちない。

どうしたら、いい?

このままルーの思い通りにはさせられない。そんなことをしたら、もう心から彼と笑い合うことはできない。

ずっと好きでも、心からそれを告げることはできなくなる。


私たちは、まだ何も知らないし、伝え合っていない。

指先に力をいれる。動いて、私の指。

手首を握るルーの手に、少しでいいから触れたら…!


ルーの顔が近付く。その一方的な口づけを、私は受け取らない。そこに私の意志はないのだから。


どうか知って欲しい。


指が僅かに動いた。くっと指を内側に曲げるように意識を集中する。ほんの少しだけ、ルーの親指に触れた。

私は心の中を全てさらけ出すように、その指先に願いを込めた。


ルー、私は…

愛してる、本当は優しいあなたを。とてもとても…


次回、ルーの完落ち

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ