熱と自覚と8(ルー視点)
Γ彼女を返してもらえませんか?」
Γ返すだと?そんな筋合いはない。」
Γなぜ連れ去ったんです?」
Γ……。」
Γ彼女を愛してるんですか?」
Γ……。」
Γ愛など知らないくせに。」
リュカとの魔法による交信を一方的に切る。
額に手を置いて、ソファーに凭れる。
自分だってわからない。なにせ初めての感情なのだから。
ただ、今ミヤコに口をきいてもらえないという、まるで小さなことが…、いやに堪えている。
連れて帰って手に入れたと思ったのに、なんだろう、この空振り感。ああ、くそ、どうすればいいのか。
窓の外を見て、雨が降りだしたのに気付いた。
迎えに行かねば。ミヤコは雨が好きだから、濡れても気にしない。また、風邪を引いてしまう。
****************
波に白い素足を浸して、やっぱりミヤコは濡れていた。濡れた服が貼り付いて体のラインをはっきりと見せて、仄かに肌の色が映っている。艶増す黒髪から水滴が落ち、首や鎖骨を滑っていく。
遠くをぼんやりと眺めていたミヤコが、こちらに気付いて振り向いた。
彼女の視線で、我に返る。どうやら俺は不覚にも、ミヤコに見とれていたようだ。
そうっと唾を飲み込み、むくれたままの彼女を持っていたタオルで包んだ。
Γふわっ!?」
Γ…馬鹿、また風邪引きたいのか?」
わしゃわしゃと髪を拭いてやりながら、彼女の頭を抱き込む。
Γ……。」
Γ?!」
Γ…帰るぞ。」
手放せないなら、手にいれるしかないだろう?
料理は器用なのに。