熱と自覚と6
ピチュピチュ
鳥の鳴き声で目が覚めた。天井をぼうっと見ていたが、やがて寝返りを打った。
大きな窓の外。今日は晴れているな。私は、朝日の射し込む森を眺めた…
森!!?
Γんん?」
森なんて見えないはず。ここは…
Γ起きたか?」
驚いてがばっと起きたら、くらっとした。肩を支えられて落ち着くのを待った。
Γ酒のせいだ。熱は下がっているようだが、起きられるか?」
Γええっと…」
そうだ、私!
パタパタと自分の体を触って、服に乱れが無いのを確認する。だ、大丈夫そうだ。昨夜のままの服だ。
ほうっと一安心して、ようやく頭が働きだした。
Γルー?」
私をじっと見ている彼に恐る恐る聞いてみる。
Γ私を助けてくれたの?あの人は、ジークはどうしたの?」
Γあんな奴が心配か?」
眉をしかめて、不機嫌にルーは言うが、そうじゃない。またローレンに迷惑がかかるのが心配だった。それに、ルーが酷いことをするのも嫌だ。
Γこ、殺したり、してないよね?」
Γ…その一歩手前ぐらいにはした。」
Γダメだし!」
慌ててベッドを降りると、玄関に向かって走った。謝らないと!
Γどこへ行く。」
ガシッと後ろから、ルーの腕がお腹の辺りを巻き付くように抱える。
Γは、放して!ローレンにまた迷惑掛けちゃった。謝らないと!」
Γ落ち着け。」
バタバタしても、ルーの腕はびくともしない。
Γううー」
Γよく考えろ、お前を向こうの世界から誘拐するような真似をしたのは誰だ?そんな奴等に義理立てする必要はない。」
Γでも…」
Γそれに、あの王はお前などいなくても、上手くやる。」
Γ……ジークの怪我が」
Γリュカが治すだろ。」
次第に冷静になってきて、私は自分の背中にルーの体温を感じていることに気がついた。
恥ずかしくなって、お腹に回っている彼の腕を掴んで解こうとするのに、更に強く抱き込まれる。
左耳の後ろで、彼の呼吸を感じて、びくっと体が揺れた。
Γうっ、ええっと、は、放して」
Γ……」
しばらくして、ゆっくりと手が緩められた。
振り向くと、私を見つめるルーの瞳が微かに揺らめいた。
Γここ…ルーの家だよね?」
Γ…外に出てもルルカには戻ることはできないぞ。」
助けてくれたのは分かる。だけど…
Γどうして私を連れてきたの?」
Γ…もっと早くこうすれば良かったと思っている。」
Γえ?」
Γ我慢の限界を越えたからだ。」
目線を床に落としてから、再び私を見たルーに、以前感じた怯えのような感覚を私は思い出した。
Γどこにも行かせない、ミヤコ。俺とここでずっと暮らしたらいい。」
なんだか凄いことを言われた気がしたが、なかなか頭にその言葉が入らなかった。
ルーは、私の反応を待っている。
Γ……ルー、私が、す、好きなの?」
じわりと笑いが出そうで、口を隠した。
Γ…この…わざわざ聞くか?」
クスクス笑ってしまったが、さっきの言葉が気になる。
Γずっとここに?」
Γ…ああ。」
Γ私一人じゃ、ここから出られないよね?」
Γそうだ。」
Γ私の自由は?」
Γ……」
Γ私の意志は?」
Γ……」
Γ私を一生出してくれないの?」
Γここに閉じ込めておく。」
なんだか嬉しかった気持ちが萎んで、むっとなった。私はモノじゃない。
Γわかった。私の自由が保障されないなら、口きかないから。」
Γミヤコ」
つんっとそっぽを向いてやった。
Γす、好きにしろ」
明らかに動揺して、ルーがそれだけ言った。
次回、ミヤコの勝利か?!