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熱と自覚と4

とにかくブンブンと首を振って、カリーザ領主奥方の件は拒否。まあ、ローレンの冗談だろうけれど。

そこで、疑問が浮かんだ。


Γあのう、ローレン。」

Γなんだい?」

Γ私って、この世界では美人に見えてるのかな?」

Γえ、そこ?今更?」


ローレンが苦笑した。


Γねえ、王宮の男達の熱い視線に気づいてないの?その色合いを抜きにしても、君は人目を引く美女だよ。」

Γ…えへへ、そうなんだ。」

Γ向こうの世界ではどうだったの?もてた?」

Γえ、いやあ、あ、でも…」


ローレンが、身を乗り出すようにして聞いてくるのを、何でもないと話を終わらした。

こんな話してる場合じゃない。


Γそのジークさん?との食事断ったら、もしかしてローレンに何か不利益があるんじゃないの?」

Γうーん、広大な領地を所有する、影響力のある領主だから、良好な関係は保っていたいけど…」


私は考えた。グラディアでは、ローレンに迷惑を掛けている。王妃との件は、私に責は無いと彼は言ってくれたけれど、謁見の時の私の態度はまずかったと思っている。ルルカに帰る時、サラがこっそり、大勢の前で堂々と発言されて父上は感心していたわ、とフォローしてくれたのは気持ちを軽くしてくれた。でも、ローレンは私を庇護するだけで負担になっているのは否めない。


Γ食事、するだけだよね?」

Γまあ、多分。でも熱あるし断れば…」

Γお受けします。食事ぐらい平気だから。」

Γ…そう、ありがとう。」


ローレンが、困ったような嬉しいような複雑な表情をするのは何故だろう。

その日の夕方には、私はジークと食事をすることが決まり、それまでに体を休ませようと昼寝をした。でも、熱は下がらなかった。体温計が無いので正確にはわからないが、逆に上がったような気がする。


***********


Γミヤコ、私との食事を受けてくれて感謝します。」

Γいえ。」


淡いイエローのドレスを着せられておめかしさせられた私は、戸惑いがちに椅子に座った。

案内されたのは、ジークの部屋だった。私に宛がわれた部屋と同じくらいの広さだろうか。長テーブルに沢山の料理が並んでいる。向かい合わせに私とジークが座っている。


Γカリーザ家抱えのシェフに作らせたんです。どうです、美味しいですか?」

Γ美味しいです。」


綺麗に飾り付けられたサラダを、ちまちま食べる。熱が上がった私は、食事より横になりたい。

ご飯も美味しいけど、ルーの作る料理がやっぱり一番かな。ルー、また来るかな…。顔を合わすの恥ずかしいな。


ジークの領内は、地下水が豊富で、それを利用した農耕が盛んな話とか、自分は王立学校を首席で卒業した話を聞きながら、私はつらつらと思いを馳せて、食事をしたら早く帰ろうと思っていた。


すっと手を握られた。


Γミヤコ。」

Γは、い?」

Γ初めて会ってから、あなたのことばかり考えています。私と結婚して下さい。」

Γへ?」


昨日会ったばかりで、早くない?!


Γあなたが好きです。愛しています。」


熱っぽく視線を向けられ、驚いて手を離そうとした。一旦、手を放したジークはテーブルを回り、私の隣まで近づいて来た。


Γ食事をするだけだと、聞いたのですが。」

Γそうですか。」

Γ体調がよくないので、帰ってもいいですか?」


私の側に、テーブルに片手をついて見下ろしているジークが、いやに近い。


Γ気を悪くしたらお許しください。お詫びにこれを…」


ジークが持つ瓶から、私のグラスに透明な液体が注がれた。


Γせっかくなので、一口飲んでみて下さい。飲まれたらお帰り下さっても結構です。」

Γ分かりました。」


気を緩めた私はグラスを持ち、ぐびぐびっと飲み干した。

途端に視界がぐらついた。


Γか、かえります。」


立とうとしたが、力が入らない。私は透明な液体が、水かジュースだと思っていた。飲んでみてしまった、と思った。西洋風なこの世界では、先入観でまずないと思っていたが、日本酒のような味わいのきつめの酒だったのだ。熱がある上に、未成年の私に飲ませるなんて…!わざとだ!


手をついて、なんとか立ち上がろうとしたら、よろめいた私を、ジークが抱き寄せた。


Γさ、さわらな…」

Γ不自由はさせません。共に過ごせば、情も湧くでしょう。だから、私にルルカとグラディアを下さい。」


ジークが私の耳を舐めて囁いた。


Γよちの…」

Γそう、あなたが最高の魔法使いになるのなら、私に力を貸して欲しいのですよ。ミヤコ。」


首を舐めあげられ、ぞわりと鳥肌が立つ。


Γでも、愛しているのは本当です。ミヤコ。」

Γうそ、だ」


一目惚れなんて嘘だ。あるとしたら、私の外見しか見ていないに決まってる。利用したいだけだ。

綺麗な顔だが、酷薄そうな唇で笑い、ジークが私の体を抱え上げた。

歩む先にベッドがあるのを見て、私は暴れようとしたが、手足がまるで言うことをきかない。


嫌だ、助けて…

意識が落ちる。


Γル…」


バキッ


眠りに落ちる前、すぐ側で変な音がした。









次回、続、最恐の魔法使いとその葛藤

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