熱と自覚と3
何も…考えられない。
顎の指がするっと動き、私の頬を包んだ。
Γミヤコ様。」
戸がノックされて侍女さんの声に、正に飛び上がらんばかりに驚いた。
Γははあっいい!!」
はっとしたように、ルーの指が離れる。
Γミヤコ、様?陛下が御呼びです。執務室までお越しを。」
Γい、今行きます!」
Γ…ちっ」
舌打ちと共に、ルーの姿がかき消える。
私は、食器を重ねて片付けて、ぎこちない動きで部屋を出た。
た、助かったあ。ドラマのお決まりに助けられた。
はああ、と深呼吸をして騒がしい心臓を落ち着かせる。あれは、やっぱりそうだよね。ルーは、私に…
そっと自分の唇を触って、思い出して頭を振る。
いや待てよ、額に額を当てて熱を測ろうとしたのかもしれない。
そうだったら、残念。
あれ?助かったって思ったのに残念って、ああ、自分がよくわからない。
執務室に通されると、ローレンが目を通していた書類から、顔を上げた。
Γミヤコ、顔が赤いよ。どうかした?」
Γえ?!」
隠すように顔に手を置いて、視線を逸らす。
Γ風邪引いて、ね、熱があるから。」
Γえ、そうなの。それなら断ってもいいか。」
何のことかと、再びローレンを見て首を傾げる。
Γ…うん、美人だね。潤んだ大きな瞳とか、ぽってりした唇なんか色気があるし、あの人が一目惚れするのも仕方ないね。」
Γ一目惚れ?」
私を鑑定するかのようにローレンが見つめている。
Γカリーザ領主であるジークが、ぜひとも君と食事をしたいそうだよ。なんでも一目で恋に落ちたとか。」
Γはい?」
なんで僕がこんなこと代わりに言わないといけないの恥ずかしい、と頬を赤らめるローレンに、私は混乱した。
Γ誰が、誰を?」
Γミヤコ、カリーザ領主の奥方になりたい?」
あまりに急で、返す言葉がなかなか出てこなかった。
次回、恐怖の魔法使いとその嫉妬