出会ったのは、魔法使い4
タイトル変えました。ご指摘参考になります。ありがとうございます!
「お前は召喚された。俺がしたんじゃないがな。
誰が召喚魔法を使ったかは、わかっている。」
誰が?って聞きたかったが、言葉が出なかった。
そう話すルーは、冷たい瞳をしていたから。
途方にくれて俯く私の前に、ぱっと服を差し出された。
「…え?」
「暑そうな服を着てるな。これをやる。」
何ともないように出されたのは、淡い水色のワンピースのような…、勿論女物の服だった。
「こ、これ、どうし…」
「何だ?」
「いえ、ありがとうございます。」
「敬語はいい。」
「…可愛い。」
私の心の小さな呟きを聞き取って、満足そうに彼は口角を上げた。
私のいた世界は冬だったのに、ここは初夏のようで暑さを感じていたのだ。
寝室に着替えに行く私の後ろから声が掛かった。
近づいた彼が、背後から私のこめかみに触れた。
「ああ、言い忘れたが、見つけた時にびしょ濡れだったので一度お前の服は乾かしてる。」
「…ええっ!?ぬ、脱がし!」
「魔法で。脱がしていない。」
真っ赤になって振り向いた私に、人の悪い笑みを浮かべてルーは言った。
「なんだ。」
ホッとする私に、追い討ち。
「ああ、お前の寝ていたベッド俺のだから、俺も寝てたから。」
「ひえっ?!」
「お前の隣で寝ただけだ。ナニもしていない。」
「ほ、ホントに?!」
わたわたする私を見ながら、彼は穏やかに言った。
「…多分。」
「…うう」
からかわれているのに、さすがに気付いた私は彼から逃げるように寝室の戸を閉めた。
低く笑う声を聴きながら、ワンピースに着替えた。
それにしても、彼はどうやってこの服を手に入れたんだろう?
魔法使いということは、島だというここから別の場所に移動できるのかもしれない。
いや、そうでなければ、あんなメニュー豊富な朝食は用意できないはず。
男の人が、ワンピース買うなんて勇気いるよね?
そこまで思い立って、ようやく気付いた。
さっきのからかいもそう、私が落ち込んでいたから。
ルーなりに、元気づけてくれてるのかな?
着替えて、そろりと寝室から出た。
ルーは、なぜか廊下で待っていて、私を見て目を見開いていた。
数秒固まったように、着替えた私をじっと見てからおもむろに踵を返した。
「あ、あの」
駆け寄って、彼の手を握った。
「なっ!」
「いろいろありがとう、ルー。」
驚いた顔の彼の手を、自分のこめかみに押し当てお礼を言った。
「…何もしていない。」
そっぽを向く彼に、少しだけ笑顔を向けられた。
…滝に視線を移して、息を吐いた。
それが先程までの出来事。
良かった。見つけてくれた人が、ルーで。