私と彼女の望み11
ルルカに帰る道中は、ローレンと一緒の馬車だった。
Γねえ、来た時よりも人が減ってない?」
Γああ、リュカが先に国に帰したよ。帰るだけなら、行く時より気を使わないしね。」
足をぶらぶらさせて、僕も早く休みたいよとぼやいてローレンは欠伸をした。
Γ先に?」
Γ魔法で翔ばしたんだよ。あ、護衛は残してるから安心して。馬車とかは大きすぎて翔ばせないけれど、一度に十人以上は行けるよ。」
Γ便利だね。」
そういえば最初の頃、島からリュカに連れられてルルカに来たのもそれだった。
まばたきするぐらいの僅かな時間で移動できるなんて楽だな。
Γ魔法使いにとっては、グラディアでもルルカでも距離なんて感じないだろうね。」
ローレンが、にっこりして言った。
Γそうだね。」
Γまた会えるさ。」
Γ…え。」
Γ会える。」
私の心なんて、王様にはお見通しのようだ。返事もできず俯いたら、それ以上は言わずに彼は眠ってしまった。
大人びて見えるけれど、寝顔はあどけないなあ。
そう思って、私は到着までその寝顔を堪能していた。
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ルルカに帰って来て、宛がわれている部屋に着くと、どっと疲れが押し寄せた。グラディアでは、口汚い貴族に会わないようにしたり、それなりにいろいろあったから、知らず気疲れしていたようだ。
楽なワンピースに着替えて、ばふっとベッドに転がる。
目を閉じて休んでいたら、なんだか美味しそうな料理の匂いがしてきた。
Γ…もう夕御飯か。」
Γほら、飯だ。」
Γほあ!?」
声の近さに、驚いて飛び起きた。
料理皿を両手に持ったルーが枕元に立っていた。
Γほら料理上手な魔法使いの手料理だ。食べてみろ。」
Γ…は、はい」
美味しそうな匂いの誘惑に、ふらふらと彼に近寄った。そんな私を満足そうに眺める彼に、自らの胃袋も掴まれることを覚悟した。
最高の魔法使いとその虜の胃袋。