私と彼女の望み10
Γ洗脳は完全に解けたようですね。」
リュカが私の手を取って意識を診ている横で、ローレンは黙って私を見上げている。
Γなあに?」
Γん、ルシウスはどうして君を助けたんだろうと思ってね。」
思わず、歯を立てられた腕に目をやり赤くなる。
あの時の彼の表情は、私の反応を見て楽しんでいたようだった。
Γ…オモチャ扱いじゃなければいいんだけど。」
Γあー、それならリュカは君を駒扱いに…」
咎めるように、リュカがローレンを見た。
Γ実際そうなのはわかってるわ。だから、召喚なんかしたんでしょう。」
恨めしげにリュカにちらっと視線を送り、自分の腕を手で撫でた。
それでもいい。でもリュカの言いなりになるのは嫌だ。
考える私の髪を、ローレンは撫でた。
優しく撫でながら、ぽつりと言葉を落とす。
Γサラがミヤコにごめんって。」
Γ…うん。気にしてないよ、これからも友達でいようって伝えて。」
ローレンが少しだけ笑顔を見せた。
Γうん。ミヤコありがとう。」
私はもう王妃に怒っていない。国を思って、彼女なりに守ろうとした結果だ。
方法は間違っていたかもしれないが、 理解はできた。
*********
明日帰るそうだ。洗脳から目覚めて二日が経った。
昨日もそうだったが、今夜もなかなか眠れない。
布団に入ると、色々考えてしまう。
恥ずかしさで死にそうなのは、更にアップした気がする。
そう、私はルーを救いたいとか近くにいたいとか、本人の隣で叫んだのだ。好意がないと言わないようなことを朗々と!
頭に布団を被って、一人で呻いた。恐い。ルーがどう思っているかが。
呆れただろうな。バカだと思われていたら泣く。こんなことなら、彼にちゃんと告白するほうが良かった。次会った時に、彼はどんな態度を取るのかな。
********
いつの間にか眠っていた。さっきから髪を撫でられているような気がする、やっぱり撫でられている。半分眠っていて、体を動かすのはだるくてできなかった。
撫でられるのは心地よくて、そのままぼうっとしていた。
つっ、と髪を撫でていた手が私の前髪を上げた。
私の額に、柔らかな暖かい感触がもたらされた。ほんの数秒。軽く押し当てられたそれが、離れて言葉を紡いだ。
Γありがとな。」
小さな響きに、胸が震えた。
ありがとなんて、こっちの台詞だよ。そろっと目を開けた時には、暗闇だけがあった。
額に手をやり、それからその手で口元を隠して小さく笑った。
嬉しかった。額のキスは眠りの魔法ではなく、私に優しい温かさを残してくれた。