表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/207

私と彼女の望み9

肩に置かれていた手から、へなっと力が抜けて離れた。私は上空の声に気を取られていて気づかなかった。


Γここから出るから!予知も洗脳も関係ない!私は私、思い通りにはなるもんですか!」


声が聴こえなくなった。押さえつけるような頭の痛みは消えて、意識が浮上するのを感じた。

やった!戻れる!


Γはあ…勝った。」


緊張を解く。辺りが淡く白く輝く。自分の意識がクリアになっていく。


Γ…あれ?」


私はようやく気づいた。すぐ隣に彼がいることに。


Γ………。」

Γルー?」


ひどく驚いたのか、彼には珍しく口を開けて、ぽかんとした顔で私を見ている。


あれ?いつからいたの、かな…


*******************


Γうううーん、よく寝た。」

Γ…起きたか?気分はどうだ?」

Γなんだか…言いたいこと言って、すっきりした感じ。」

Γ…それは、そうだろうな。」


気分爽快に私は目を開けた。目の前にルーの顔を見た。


Γわわわっ!」


ずさっと下がると、壁に背中を貼り付かせた。

思い出して、ようやく理解した。


Γルー、私洗脳されて…」

Γああ。」

Γ私を助けてくれたの?」

Γ俺はきっかけだけを与えた。あとは、ほとんどお前の力だ。」


ベッドの端に座ったルーは、真面目な顔で私を見ていたが、そこまで言うとふいっと顔を逸らした。

沈黙が部屋を漂う。私は固まってどんどん顔に熱が集まるのを感じていた。


Γあ、あの」

Γ…」

Γ全部、見てたんだよね?」

Γ俺の腕を噛みやがった。」


ルーが向こうを向いたまま、ぼそりと低く呟く。

ひいい!


Γご、ごめんなさい!あの時は、その、わからなくて、ごめんね。それにありがと。」

Γ覚えてろ。」

Γうう」


枕を手繰り寄せ、顔を隠してから一番言いにくいことを何とか言ってみる。


Γあのう…、私の言ったこと、忘れてください。」


ああ、あれじゃあ告白したようなもんだよね。もう顔見れない。恥ずかしい!ルーを洗脳したい!


ぽおん!


Γあ!」


ルーの手により、枕は遠くに飛んでいった。


Γなにがだ?何を忘れて欲しいんだ?」


ベッドに膝をのせ、じりじりとルーが私に詰め寄る。にやりと笑みを湛えて、顔を隠そうとする私の手を払い除ける。


Γううっ…知らない。忘れたの。」

Γふうん。そうか?」


私の指を掴んだルーはご機嫌そうだ。

ああ、心が見えてる!?

目を左右に動かしてわたわたする私を愉快そうに見ながら、ルーはこれ見よがしに口を開け…


かぷり


私の腕を噛んだ。


Γふえん!?」


はむはむと甘噛みされているのが衝撃で、固まって見ているしかできない。

痛くなく、むしろ優しいと感じるぐらいで、なんだかぽうっとしていたら、上目遣いで私の反応を見ていたルーは、ゆっくりと口を離した。


Γおあいこだ。」


腕に、弱く歯形が付いている。動悸が更に速くなり顔が熱くて、もうぐらんぐらんだ。


Γか、勘弁してえ…」

Γさて、夕飯の準備をしなければな。帰るか。」


満足そうに笑い、ルーは身を起こすと立ち上がった。

彼が、またなと囁き消えるのを、私は茫然と見送った。それからベッドに突っ伏し、一人悶えていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ