大罪の魔法使い6
パチパチと炎が、崩れた壁を燃やしている。床には既に事切れた魔法使いの子ども達。治癒が追い付かないように、もう苦しまなくてよいように、首をはねられたり、心臓を切り裂かれたりして、皆一撃で致命傷を受けていた。
赤い炎に照らされた長い黒髪の妖艶な女が叫んだ。
「なぜ私を殺す?!私はお前を育ててあげたのに!」
「…僕も、本当の母さんだと思っていた。」
「だったら…」
「僕の洗脳が解けるまでは…」
仲間たちの返り血を浴びて、幼いルシウスは涙を流し続けた。すいっと右手を振りかざした。
「ルシウス!ああ、母さんが悪かったわ!私の可愛い子!愛してるわ、だから許して!ね?」
髪を振り乱し、リリアはルシウスに手を差し出す。
「……」
「ほら…」
抱き締めるために伸ばされたその手に、ルシウスは嗚咽を上げながらかぶりを振った。
ぐっと目に力を込め、最後の言葉を投げ掛けた。
「さよなら、大好きだったよ。リリア…」
右手を下ろした。風が刃となり、リリアのその細首をはねた。
声も出さずに絶命した彼女の体が床にくずおれる。同時にルシウスも膝を折って、床に手をついた。
べちゃ、と音がして、ついた手が血だまりで真っ赤になった。ゆっくりと両手を、そして身体中に目をやる。どこも血だらけだ。自分のではない。
一緒に育った仲間達の血だ。自分が全員殺した。
「あ…ああ!ああああああああ!!」
ルシウスの周りを風が渦巻く。館の屋根が吹き飛んだ。
苦しいよ!どうしたらいい!こんなにも穢れて!僕は…!
誰か!誰か助けて!僕はどうやって生きたらいいんだ!嫌だ!誰か僕を一人にしないで!
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荒い呼吸でソファーから身を起こす。うたた寝していたらしい。
舌打ちして、目元を手で押さえた。また嫌な夢を見た。額に汗をかいていた。
もう半世紀も昔の夢だ。古い記憶だ。いい加減記憶から消えてくれたらいいのに。
呼吸を整えてから、ルーは思い付いた顔をして、しばし目を閉じた。
監視している女の様子が気になったからだ。
再び目を開けてソファーから降りたルーは、僅かに迷うようにじっと立っていた。
それから無言で顔を上げ、島から移動するために魔法を使った。
魔法使いはストーカー?