大罪の魔法使い5
催眠ではなく洗脳の間違いでした。
「…ごめんなさい。何でもないから…」
子供の前で泣いてしまい、恥ずかしくて目を乱暴に拭いた。
「聞いて気分のいい話じゃないから…。大丈夫?」
私は頷いて、話の続きを促した。
「リリアは当時のグラディア王が領土拡大を狙っているのに乗じて、特別な軍を編成した。それが、魔法使いのみで構成された軍だった。ルシウスは、赤ん坊の時に買われてそこで育てられた。リリアは世界中から魔法使いを捜しだし、子どもや若者だけを軍に入れて、長く生きている魔法使いは全て殺した。子どもの魔法使いにそれをさせたんだ。」
「え!」
「洗脳は、若い魔法使いに効きやすかったから。」
サラがローレンの手を引いて、街がよく見える柵の辺りに行きたがった。抱っこして柵の上から景色を見たいのだ。私は二人と街の景色を眺めた。
「ルシウスたちは、リリアを実の母のように慕い、言うことをきくように洗脳されていた。何をしても罪悪感も湧かないように、それはそれはきっちり操られていたようだよ。」
ローレンの言葉にはトゲがあったが、婚約者を抱っこする仕草には優しさがあった。
「ルルカに侵攻して、ルシウスは僕の曾祖父に重傷を負わせ、リュカの父親も戦って死んだ。とどめを刺したのは、リリアだったみたいだけどね。リリアは彼を殺すことで、予知の力を手に入れた。」
「どういうこと?」
「魔法使いは、他の魔法使いを殺すと相手の特殊な魔法を奪うことができる。リュカは父親から遺伝的に予知の魔法を受け継いでいたんだ。」
遠くで鐘の音がした。
「おっと、もう帰らなきゃね。リュカがごまかしてくれてるだろうけど、遅くなるとリュカが怖い。」
話しながら帰ろうと言うので、私は暗い広場を少しだけ見つめてから、踵を返した。ずっと胸がちりちりと痛い。
階段をサラの手を引き下りながら、ローレンは沈んだ声を出した。
「…予知の魔法をリリアが手に入れてからが、本当の悲劇だった。」