大罪の魔法使い4
「…兵器?」
ローレンは、石碑を指差す。
「もう言葉は読めるよね?」
肯定することも忘れ、近寄って見た石碑には、小さな文字がびっしりと書かれていた。なんとか解読した石碑の内容は、50年前に起こったグラディアのルルカ侵攻の顛末だった。
「僕の曾祖父がまだ王だった頃、グラディアにはリュカと同じくらい強い魔法使いの女性がいたんだ。」
指で辿った石碑にもその名が刻まれている。
「リリア」
「そう。彼女は洗脳という特殊な魔法を使い、人々や魔法使いでさえ意のままに操る力を持っていた。」
柵の間から、街の景色を眺めているサラをちらっと見てから、ローレンは私の隣に来るとサラに聞こえないように声を落とした。
「サラの曾祖父が王だった頃、リリアはその愛人だった。そして、サラの母親はリリアの孫に当たる。幸運にも魔法使いの血は薄まって、サラは魔力を受け継いでいないけれど…」
そこまで聞いて、私は気付いた。ローレンがルシウスを被害者だと言ったのは、王家を守るためにルーが標的にされたのだ。
「本当に罪があるのは、王を唆したリリアだ。だが、彼女の血は王家に流れている。王家を貶めないために、リリアに操られ善悪も分からず、殺人を犯した幼い子ども一人に罪を背負わした。」
「………。」
ローレンは驚いた顔をして私を見つめた。
「ミヤコ、泣いてるの?」
「あ…」
言われて、目元に触れた。自分でも気づかなかった。涙が溢れて止まらない。
「ふぇ…く」
冷たい笑みを浮かべていたルー。
彼は…、ずっと一人で大きな罪を甘んじて背負っている。
彼はどうしたら救われるのだろう?