大罪の魔法使い2
「どういう…」
『殺した』との一文を何度か読み返し、私は本から目を離した。とても読み進める気にならず、本を胸に抱いて窓の方を見た。
何かあると思っていたけれど。自分が結構ショックを受けているのに、戸惑った。
コツン
窓に小石が当たった。
コツン、コツン
「ん?」
窓辺に近づいてみたら、真下に二人の子どもがいた。ここは二階だ。窓を開けて、見下ろすとローレンとサラだと気付いた。
「どうしたの?」
「ミヤコ、デートに行くよー。」
ローレンは口を囲うように手を付けて、周りに聞こえないように小声で言った。
彼の背後で、サラも手を振っている。
「えっと、私謹慎中なんだよ?」
そう言えば、ローレンはイタズラっぽく笑った。
「そうだね。ミヤコは部屋の扉から一歩も出ないよ。ただ、窓から出るだけだから。」
「はい?」
「いいから。」
「……。」
本の続きが気になり迷う私に、ローレンは的確に弱い所を突いてくる。
「ルシウスのこと、詳しく知りたくない?」
意味ありげな笑みを見て、私は小さく頷いた。
「…待ってて。」
ベッドのシーツを窓のカーテンレールにかけて、それを両手でしっかり持つと、そろそろと窓の外へ身体を出した。
「ローレン、目を瞑ってて。私、スカート。」
「あ、はい。」
素直に手で目を隠して、ローレンは待っていてくれる。
「お姉ちゃん、可愛いー!青の花柄…」
「だ、だめ!サラちゃん、しー!」
危うくシーツから手を離すところだった。
目を隠したままのローレンの頬が赤い。
「み、見てない!見てないから!」
なんて恥ずかしい光景でしょう。
うっかりスカートで壁をまぬけに降りている私。パンツを誉める少女。赤い顔の少年。
誰かに見られたらヤバイ…
私は、急いで壁を降りた。真下の一階の部屋に誰もいなくて良かった。最後はストンと飛び降りると、服を整える。
「よ、よし、行こう。」
ローレンから手を握られて、サラはにっこりして頷いた。謁見の間での内緒話は、二人でデートの約束だったのかな?
「私、お邪魔じゃない?」
冷やかして言うと、二人が手を繋いできた。
「サラもミヤコと行きたいって。」
「うん、わかった。ありがとう。で、どこへ行くの?」
さすがに子ども二人では危ないだろう。私は王宮の抜け道を知るサラについて行きながら聞いた。
「僕たちにお任せで。」