出会ったのは、魔法使い2
頭が混乱してそれどころじゃないと思うのに、食べろとばかりのこの状況。
作ってくれた彼に悪いよね。
一口食べると…
「美味しい!」
それに随分自分がお腹を空かせていたことにも気付いたので、パクパク食べてしまった。
彼はというと、そんな私を向かい側の席で
自分の分を食べながら、時折こちらを観察するかのように見ている。
我ながら良い食べっぷりに、見ている彼に呆れたような表情が浮かんだのは…間違いないみたい。
遠慮なく食べすぎたかな。
痩せの大食いと弟に言われているのは認めている私は、1.5人前ぐらいをペロリと平らげてから急に恥じらった。
赤い頬で、上目遣いで彼をそうっと見てみたら、手で口元を覆いながら、クックッと小さく笑っている。
「ご、ごちそうさまでしたっ」
言葉は通じてなさそうだけれど、恥ずかしさを誤魔化すように言って、下を向いた。
「*****」
彼が何か呟いて、椅子を引いて立ち上がり、私の隣に目線を合わせるように屈んだ。
「わ…」
彼の手が、ふいに私のこめかみ辺りを触った。
「俺の言葉がわかるか?」
「わ!」
頭に直接響くような声が聴こえ、驚く私を見て、
「聴こえるな。声に出さなくていいから、心で話すようにしてみろ。」
と、口を一切動かさず私を見ている彼に、とにもかくにもまずは疑問を解決したくて言われた通りにしてみた。
「あの、私、どうしてここにいるんですか?ここはどこですか?あなたは誰ですか?私、私…!」
泣きそうな私に、困ったように小さく溜め息を吐き、彼は言った。
「…取り敢えず、俺はルーだ。ああ、敬語はいらない。」
「るう?ルウ?カレー…」
「なんだ、それは?食べ物か?食べ物をイメージするな。」
心で描くイメージ(美味しそうにカレーをハムハム食べる私の図)が、ダイレクトに伝わってルーは嫌そうに顔をしかめた。
「で?お前、名は?」
「お、おまっ?…ミヤコです。」
上の名は名乗る感じでもなかったので、ルーに倣って名乗った。
「ふうん、ミヤコ。」
ドキッ
家族以外、男の人に下の名を呼ばれたのは初めてかもしれない。
なんか落ち着かない。
はっ!
「なるほど…、ミヤコ。」
「や、やめて。わざとね?」
今度こそ真っ赤になる私を、面白そうに見やり、ルーは思い出したように言った。
「ああ、俺は魔法使いだ。だからこういうふうに心が読める。」
「………。」
「俺はルシウス。この世界最高の魔法使いだ。」
なんとなしに得意げな中二病発言をぼんやりと聞いて、私は頭が真っ白になった。
ここは…、私のいた世界じゃないんだ!