グラディアへ11
リュカは魔法使いだから、ルーがこっそりこちらを見ていたりしたら、すぐに気づくらしい。
でも、私にはわからない。
昨日の笑い声を聞いて、私は視線や気配を感じないかと、辺りに気を配ったりしていたが…わからなかった。
自分に宛がわれた部屋には、お風呂やトイレなどが完備してある。私は侍女さんたちに一人でできるからと断って、お風呂に入った。
でも服を脱ぐ前に一言。
「お風呂ののぞきは犯罪。」
と一人で警告することを忘れなかった。
こちらが見えなくても、相手はいつ私を見てるかわからない。
髪を洗い、タオルで隠しながら身体を洗う。浴槽に身を沈めぼうっとしていたら眠くなってきた。
着替えて身支度を整えて布団に潜り込む。
暗い天井を見ていると、自分がこの世界で異質な人間だと孤独がじわっと湧いてくる。
ルーも、こんな感じを味わっているのかな?
貴族達の剥き出しの憎しみ。彼が心ある人ならばツラいはずだ。
「ねえ、ルー。いるの?」
シンッと静かな部屋に、構わず私は布団に丸まったまま話をすることにした。
今日一日のこと。リュカとの話のこと。貴族の悪口も少し。
「…予知だなんだって、私にも意志があるのに、みんな勝手よね。」
端から見たら、一人で話す変な人だ。
「予知って絶対なのかな?」
あくびを一つ。
「…未来は、自分の力で変えていくものじゃないの……私は、決まった未来なんて…認めない…くー」
私はそこで眠ってしまった。
だから知らなかった。
部屋の隅に佇んで、眠る私を静かに見つめる彼を。
睡魔と戦っています