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虜の成れの果て7

私達をにこにこしながら見ているサラ。ローレンはそんな新妻を見て声を掛けた。


Γサラ、ぼく…、私達も仲良くしようね。」

Γはい。」


当然のように答えたサラに、ローレンが一瞬淋しそうな表情をしたのを私は横目で見ていた。普段は、あまり心を読ませないように笑顔を貼り付ける彼が、実は妻を妹のようにしか思っていないことを私は薄々気付いていた。まだ十にも満たない少女を、恋愛対象とするのが難しいのは当然かもしれない。

まだまだ幼い夫婦を見ていたら 、そっとお腹を触られて驚いてルーを見上げた。


Γ他人の心配してる場合か…気分は?腹は大丈夫か?」

Γだ、大丈夫だよ。」


さすがに皆に見られて…式を挙げてる最中に生々しくて恥ずかしい。私は撫でる手を握って外し、そのまま手を繋いだ。


Γミヤコ」

Γはい。」

Γ俺はまだ誓いの言葉というものを言ってない。」

Γそう?」


んん?再会した時に、聞いた気がするけれど?


ルーは、片手を顎に当て考え込んだ。


Γ改めて言うとなると、どう言ったら良いか…」

Γルー」

Γミヤコ、俺は気の利いたことは言えないが…」


嘘つき!


私はもういても立ってもいられなくなって、ルーに飛び付くようにして抱きついた。


Γなっ…!無茶をするな!」


私のお腹を気にしながら、ルーは片手を肩に、もう片方の手で私の頭を抱いて、やんわりと応えてくれた。


鼻の奥がつんとするが、私は泣かないように堪えた。せっかくの式を涙で霞ませたくない。


Γ……ルシウス」


ルーは嘘つきだ。誓いの言葉なら、私はずっと何千回、何万回も彼から聴いている。毎日毎日、私にご飯を作ってくれる時も、隣で本を読んでいる時も、雨の日に散歩に出た時も、新しく庭に一緒に畑を作った時も、海を見に行った時も、仕事をしている時も、街に買い物に出かける時も、夢中で肌を重ねた時でさえ…


Γ私、言葉なら充分もらってる。だからいいの。」


言葉だけじゃない。ルーの瞳で、あるいは指で、その鼓動で…


Γそうか?足りないぐらいだが……」


唇を噛んで、私はきっと甘えたような切ない顔をしているだろう。ルーはそんな私の顎を上向かせて、満足そうに笑い唇を啄んだ。私の唇を果実でも食べるように自分の唇で挟んで楽しんで、それから思い付いたように私の耳に囁いた。


Γミヤコ、俺はやっぱりこれ以上の言葉が見つからない。」


私は目を閉じたまま、夫の熱っぽい吐息が耳に吹き込まれるのに身を任せていた。


Γ愛してる。」


やっぱり涙が一粒ポロリと零れてしまった。ルーは洗脳の魔法でも使ってるんじゃないかと思う。でも、この魔法は私でも解けない。永遠に。


Γずっと愛してる。俺はお前のものだ、ミヤコ。」


なぜなら…

そう続けて、ルーは一度言葉を切り、にやりと不敵に笑った。


Γ俺は、最高の魔法使いの虜だからな。」


次で最終回です!

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