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虜の成れの果て6

Γ誰に誓うの?」

Γ誰?」


謁見の間の本来は玉座が置かれているはずの一段高い場所に立って、私達は向かい合っていた。


Γ……一般には、創世の魔法使いシノールに誓うものですが…」

Γ却下だ。」


リュカのアドバイスに、ルーは心底嫌そうに顔をしかめた。


Γあんな失恋した奴に誓ってどうする?」

Γ確かに縁起悪いね。」


神のように崇められている彼には悪いけど、赤の他人に誓うのは何か違う気がした。私は異世界出身で、崇めていないしね。


Γじゃあ、ルーに誓う。」

Γもう誓い合った気もするが…ではお前に。」


私はルーをしっかり見つめて言った。


Γ私はルシウスと一生一緒に生きて、決してあなたを一人にしない。幸せにできるかはわからないけど…」

Γミヤコ、今さらだろ。」


ルーが自分の襟元から何かを取り出した。私の左手を取る。


Γあ…」


薬指に銀の指輪を嵌められていた。


Γ向こうの世界では、こうするんだろ?」


悪戯っぽい表情で私の手を眺めたルーは、俺のものだという証みたいでいい…と満足そうに言った。

そして、私の手のひらに一回り大きな指輪を落とした。どちらも羽のような模様が施されている。シンプルだが、ずっと付けていられるものだ。


Γこのために出掛けていたの?」

Γ店が閉まっていたが、無理やり買ってきた。」


無理やり?!

お店の人大変だったろうな。


苦笑しながら、ルーの指に指輪を嵌めた。

この人が、私のもの…

そう思ったら、何だか凄いことのように思った。


Γ最高の魔法使いを手に入れた。」

Γ俺もな。」


二人で額を付け合って笑っていたら、リュカが歩み寄って一枚の紙を渡してきた。


Γでは、これにサインを。」

Γは?」

Γん?」


それはグラディア国の結婚届だった。


Γこんな紙切れ…」

Γはい、ルーも書いて。」


私は持たされたペンで、妻の欄にサラサラと名前を書いた。


Γなぜ人間みたいなことをしなければならない?」

Γえ、だって…」


いまいち納得してなさそうなルーに、もじもじしながら答えた。


Γ……子どもができるし…その子に、事実婚なんて説明できないし…それに書類にしたらメリットもあるかと…」

Γ………」


Γそうだよ、この届を持って君達を国民として特例で認めるつもりだ。そうしたら、ここでの発言権も強くなるし、更に働き易くなるだろ?」


ローレンの言葉にルーは、ペンをじっと見る。


Γ俺とミヤコの子の権利も保障できるか?」

Γああ、誓おう。」


名前を記すルー。子どものことも考えることができるなら、ルーはちゃんと父親になれるだろう。


結婚届を回収したリュカが、それを事務的にローレンに渡す。


Γそれじゃあ、納税の義務も果たしてね。」


確認してにこっと笑う上司に、ルーが冷たい目を向けた。


Γま、まあ仕方ないよね。」


忘れてた、そういうのもあるんだった。たくさんお給料もらってるもんね。



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