虜の成れの果て2
診察を終えた王宮付きの医者が、私に祝いの言葉を告げ部屋を出て行った。
私は用意されたベッドに横になり目を閉じた。医者からつわりを軽減する薬湯を飲ませてもらい、 少し胸焼けがスッキリしていた。
音もなく、そっと唇にキスされて、私はゆっくりと目を開いた。
ベッドの端に座り、ルーの顔が間近で見下ろしていた。
Γ……大丈夫か?」
Γうん。」
私の額の汗を指で拭うルーは、なんだか緊張しているように表情が固い。
Γねえルー、どんな気持ち?」
ぎこちなく撫でるルーの指がくすぐったい。
ルーは視線をさ迷わせ、ぽつりと言った。
Γ淋しい。」
Γ淋しい?」
Γお前と過ごす時間が減る。」
拗ねてるような切ないような表情に、思わず笑った。
Γふふ、でも子どもは、あっという間に大きくなって、すぐに巣立っちゃうんだから。」
長い生を生きる私達には、子育てなんてほんの一時だ。
Γそれはそれで淋しいな。」
ルーは、ようやく表情を和らげて、それから体重を掛けないように私のお腹に触れた。
Γお前は?」
Γえ?」
Γ子どもをを身籠って……どんな気持ちだ?」
真剣に聞かれ、急に涙が湧き上がって声が上擦る。
Γ嬉しい。大好きな人の赤ちゃんだもの。凄く、嬉しいよ。」
Γ……そうか」
安心したような顔をして、ルーは私のお腹に顔を寄せた。とても大事そうにお腹を撫でるので、私は泣きながら微笑んだ。
Γルー、幸せ?」
Γ幸せ……?」
少し考えてから、ルーは目を閉じてお腹の上に顔を付けたまま答えた。
Γお前が幸せなら、俺も幸せなんだろうな。」
その言葉に不安が消し去り、私は応えるように夫の頭を優しく抱き締めた。