虜の成れの果て
Γローレン様、ルシウスを売り込む気ですね?」
Γふふ、何のことだい?」
捕らえた刺客を眺めながら、ローレンはとぼけた。リュカはそんな王を詮索するように見つめる。
Γ事前の警備計画とは違い、穴だらけでしたね?飲み物に毒まで入れられるとは。」
Γそうだね。そう仕向けたからね。」
Γローレン様。」
邪気の無い笑顔を振り撒き、ローレンはリュカに顔を向けた。
Γ要人が一堂に介した式だ。狙うならもってこいだよね。まあ、馬鹿な奴もいたものだけど。」
魔法使いに太刀打ちできようはずがない。更には殺すことなど不可能に近い。それでも実行しようとするほどに、不満な輩がいるということだ。
Γ……ついでにルシウスがローレン様を守る構図を見せつけて、彼に他意が無いことを皆に示した…というところですか?」
リュカが憮然として問うのに、やれやれとローレンは肩を竦めた。
Γいい加減もう仲直りしなよ。」
Γできるわけないでしょう。ですが…」
視線を落として、リュカは言った。
Γあの男の妻は、尊重します。」
Γ……リュカ、予知視てたね。」
ローレンは咎めるでもなく、むしろ楽しげだ。
Γ彼女は、ルシウスの抑止力です。彼女がいる限り、ルシウスは世界を滅ぼさないし、彼女が望むなら世界を救う。」
Γそれにミヤコは、魔法使いを絶滅から救う。」
Γ………ええ。」
リュカの表情が物言いたげで、ローレンは覗き込むようにして聞いた。
Γ予知は、それだけじゃなかったのかい?」
Γ内緒ですよ。」
リュカはローレンにだけ聞こえるように耳打ちをした。聞いていたローレンは、予知の内容に驚いて目を瞬かせた。
Γ……そっか。これは…確かにあの二人には秘密だね。」
Γあのう…」
後ろから恐る恐るといった感じで声がかかり、ローレンは振り返った。
Γあ、ああ、ごめんね。さあレオこちらへおいで。」
手招きすると、おずおずとレオが歩み寄る。
再び刺客達に目を向ける。後ろ手に縛られている彼らは、その上拘束の魔法が掛かって動けない。リュカが話せるように、それを少し緩めた。
Γさてと…君達のおかげで、黒幕の尻尾が掴めそうだよ。さあ、洗いざらい話してもらうよ。沈黙と死を選ぶのは辞めた方が賢明だよ。もし逆らうなら…」
レオの肩に手を置いて、ローレンは凄んだ。
Γ子どもにしちゃうからね。」
 




