出会ったのは、魔法使い
何だか暖かいな。夕方は雪が降っていたはずなのに。
ピチュピチュ、と鳥の鳴き声が聴こえる。
瞼を通して、光を感じた。
「うーん…」
伸びをして、ゆっくり目を開けた。
天井は、飴色の木材が組まれていて一本梁が通してある。
違和感を感じて起き上がると、壁にくっつくように置かれたベッドの横に、大きな出窓があった。つまり、壁の半分上側が窓だった。
硝子越しに外を見たら、緑深い森が見えた。
見慣れない風景に、驚いてよくよく周りを見ると、知らない部屋!
高校の制服を着たまま寝たらしく、皺ができてしまっている。
近くの椅子には、自分のコートが掛けられている。
それに…気になるのは、寝具から薫る知らない香り。なんだろう?爽やかな若草のような…洗濯洗剤というよりは、誰か人の匂い…
慌ててベッドからようやく降りた。
お、おかしい!
状況が飲み込めず、軽く混乱しつつ裸足で部屋の扉を開けた。
小さな廊下を通り、右手に玄関らしき扉を見つける。横目でそれを見やり、前に見える別の部屋の戸のノブを回したのは、そちらで物音と美味しそうな匂いがしたからだった。
そこはリビングだった。
右手には、革張りの大きなソファーとローテーブル。その背後には壁に作り付けの本棚がある。
物音と良い匂いは左手からだ。
奥に台所。真ん中の位置に、食事用のテーブルと椅子が二脚。
「******?」
台所から声がした。
恐る恐る覗くと、若い男が鍋をかき混ぜていた。
こちらを向いた男に、私は暫く見とれてしまっていた。
漆黒の髪の間から覗く瞳も黒。でも、目尻は少し上がりぎみで、鋭い感じを与える。
整った顔付きで、すっと綺麗な立ち姿は絵になりそうだ。
ぱっと見て日本人ではないことは明らかだったが、だからと言って人種は何かははっきりしない。
「*****」
また男が何か話したが、全く聞いたことのない言語のようで途方にくれる。
そんな表情を見てか、男がテーブルを指差し、私に座るように促す。
考えが定まらず、言われる通りにすれば、目の前に朝食が出される。
パンとスープと目玉焼きにサラダ。オレンジジュースらしきドリンクとパンに付ける蜂蜜も!
右手にフォークを持たされて、私は取り敢えず目の前の問題を片付けることにした。
「い、いただきます。」