結婚式10
ルーは私を抱えたまま、スタスタと中庭に出た。矢が次々と放たれるが、結界に弾かれて一つも当たることはない。既に炎で炙られて倒れている刺客がいた。小さく呻いていて、胸を撫で下ろす。
Γルー」
Γお前が嫌がるから殺しはしない。」
面倒そうではあるが、ルーはそれだけ言うと視線を向いの建物に移した。複数の気配を確認すると、拘束の魔法を放った。建物の陰や死角になる場所で、バタバタと人の倒れる音がして、ルーはそれを見もせずに部屋へと戻って行く。
部屋の隅には、リュカによって拘束された給仕をしていた男が一人。おそらく毒を入れた刺客の仲間だろう。
魔法使いが政治に介入すること。ルルカとグラディアが一つになること。
刺客を送り込んだのは、そういったことに不満を持つ者なのが予想できた。
Γ捕らえろ!」
ローレンが命じると、彼の傍を守るように囲んでいた人達が、手早く倒れた刺客達を捕縛し始めた。
突然のことに、うろたえる人々が私達を見ている。疲れを感じて私は口元を手で覆った。
Γう…」
目を瞑って苦しそうな私に、ルーが床に散った飲み物の残骸を踏みしめて怒鳴った。
Γ医者を呼べ!」
ルーのただならぬ表情とぐったりしている私を見て、ローレンは驚いたようだ。
Γミヤコ、怪我をしたのか?!」
Γ違う」
微かに震えるルーの声に、私は彼の顔を見上げた。まだ信じられないといったように呆然とした表情だったが、ルーは自分に言い聞かせるかのように噛み締めるように言葉にした。
Γ身籠ってる…俺の、俺の子を…」
何だか嬉しくて、口元を覆う手で私はそっと笑みを隠した。




