結婚式6
一呼吸の後、隣のレオ君が、僕かな?と言ったけど誰も反応しなかった。
ローレンが頬を掻いて困った顔をする。
Γ義父上。単純に魔力量ではリュカが最も多く持っていますが、彼は先の試合で敗れました。」
Γその通りです。」
あっさりとリュカが同意して、私は驚いた。
Γ私はもう別に魔法使いの格にはこだわりません。次位でも3でも4でも…それ以下でもいいですよ。」
私を見ながら言うリュカ。さっき話していた予知のせいだろうか。
Γではルシウスが未だ最高の魔法使いだということか?」
前グラディア王は、腑に落ちないと言った顔だ。
Γ違うな。」
ルーが私の腕をほどくと両肩を掴んだ。
Γ今、この世界最高の魔法使いは、ミヤコだ。」
Γへっ?」
ルーは愉快そうな表情で、私をざわつき出した人々の方へ向けた。
Γよく聞け。試合でリュカに勝ったのは俺とミヤコだ。だが俺は、この先永遠にこの女に勝つことはないだろう。なぜなら心奪われた時点で、俺は既に負けてるからだ。だから、ミヤコが最高の魔法使いだ。」
私は赤くなる顔を隠したが、思い直して手を降ろして人々に微笑んだ。人々が認めるように拍手を贈ってくれた。それに、少々の冷やかしも。
ルーがそこまで言ってくれるんだ。その役を引き受けて損はない。
だけどねルシウス、私もあなたに勝てないよ。
Γルー、ありがとう。」
Γ何が?俺の自己満足だ。」
それからルーは、リュカとレオに視線を向けた。
Γちょうどいい機会だ。下っ端の魔法使いども、俺の妻に敬意を表せ。」
Γちょ、ルー!」
慌てる私の手をリュカが掴んだ。
Γひえっ?!」
Γ貴女に敬意を。」
ひざまづいたリュカが、流れるような自然な所作で私の手の甲にキスをした。
Γええ?!」
Γな…」
させた本人が驚いてる。
目をキラッとさせたレオ君が、リュカの後に続いた。
思わずかがみこんだ私の頬に、レオ君がちゅっとキスをした。
Γお姉ちゃん、好き。」
え、何か違う?
ガシッとレオ君がルーに襟首を掴まれ持ち上げられる。
Γ……このガキ、やりたかっただけだろうが?」
Γあー、ダメだよ!こんな所で…」
ローレンがレオ君を取り返そうと引っ張った。上司も苦労しそう。
見ていたサラ達は、くすくす笑っている。
Γルシウス、そなたは?」
前グラディア王が促す。
Γそうだよ、僕達だけ…うぎゃ」
ぼとっ、とレオ君を放して、ルーが私に歩み寄った。流れ的に何されるかわかって、私は取り敢えず口を隠した。試合の時よりも、理性は働いていた。
そんな私に微かに目を細め、思案げにルーは瞳を揺らした。
Γ…………ルー」
すっとひざまづいたルーは、私のドレスの裾を軽く持ち、そこに唇をあてがった。
Γ……お前に敬意を」
唇を離して、私を見上げながら言う。
それから立ち上がり、何も言えずに突っ立っている私に顔を近づけた。
ちゅっ、と二度目のキスを額に贈り、ルーは照れる私を面白そうに見つめた。
Γ君達、目立ちすぎ…」
ローレンが恨めしそうにぼやいた。




