結婚式5
Γこらこら、見せつけない。」
ローレンが小声で注意するので、ルーの腕に片手だけ絡ませて、姿勢を正す。
Γ彼女はミヤコ。皆の興味の的だが、彼女は異世界から召喚され魔法使いとなった稀有な女性です。この国の発展の為、多方面に渡り、その知識や技術を活かすことができるでしょう。また魔法使いとして防災や国民の安全にも役立つ力を持っています。」
Γミヤコ殿。久し振りだな。」
今まで口を閉ざさしていた前グラディア王が、おもむろに話しかけてきて、私は内心ドキリとして彼を見た。
Γはい。」
Γ以前ここで会った時は、一部の貴族の中傷に怒って啖呵を切っていたな。」
Γは、はい。」
やっぱり言われた。あの時は、何も知らない私は、感情のままに言いたいことをずけずけ言ったのだ。思い返せば恥ずかしい。同じことがあったら、たぶんまた同じように怒るけどね。
Γあの時は、随分と威勢の良い娘だと思っていたが、まさかルシウスの妻になるとは思いもしなかった。だが、彼がそなたのそうした心持ちに惹かれたのなら納得だな。」
こそばゆくて顔を赤くしていたら、ルーは顎を引いて言った。
Γ確かに俺は啖呵を切ったミヤコを見ていたが…」
Γ見てたの?!」
Γ黙ってろ。…俺がミヤコに惹かれたのは、それだけじゃない。暗闇の世界にいる俺を導く唯一の光だからだ。俺はミヤコに生を依存している。これからの長い命を生きる為に、ミヤコが必要だからだ。」
Γルー……」
堂々と言ってのけるルーの横顔を見上げる。
前グラディア王は、呆れたように笑った。
Γさすがは…。聞いているぞ。確かこの間のリュカとの試合の時も、妻への愛を語ったそうだな。貴殿、余程奥方に惚れ込んでいるな。」
Γ………死期が近いようだな、老体…」
Γあー、ごほんごほん!」
ルーがぼそりと呟いた言葉を、ローレンが咳払いでごまかした。思わずルーの口を塞ぎかけた私も、冷や汗だらだらだ。
幸い、前グラディア王には聞こえなかったみたいだ。
Γ最後に、ルシウスを紹介します。彼は皆が知っている通り、過去凄惨な出来事の『犠牲になった子ども』でした。長らくあらぬ誤解と差別により迫害されていたが、この度我が国に仕えることを約束してくれた。」
ローレンの言葉に少々不満なのか、ルーは顔をしかめた。私は牽制するために彼の腕をしっかり握り、口上が終わるのを待った。
魔法使い全員の紹介が終了したところで、前グラディア王は小さく首を傾げ、聞いてきた。
Γそれで…現時点における最高の魔法使いは、誰なのだ?」
私達魔法使い四人は、その問いに反射的に顔を上げた。