結婚式3
結婚式と即位式が終わり、ローレンとサラは王都をパレードすることになっている。私達はその間にしばしの休憩だ。
Γはあ…」
女性用の休憩室で、私は胸をさすった。ずっと立っているのは辛いものだ。
Γミヤコ様、これ…」
レオ君のお母さんが、果物をこっそり持ってきてくれた。
Γあ、ありがとうございます。気を使っていただいてすみません。」
Γいえ…大丈夫ですか?やっぱりすぐに診てもらったほうが…」
Γ大丈夫です。少し食べたら楽になるし、この後は絶対出ないといけませんから。」
ローレン達が一時間ほどで帰ってくる。その後、私とルー達魔法使いは、前グラディア王とローレンの前で、公式に専属魔法使いとして初めてお披露目されるのだ。これは絶対に外せない。ルルカ、グラディア国中だけでなく、世界中に知らしめるものなのだから。
鏡を見て身だしなみを整え休憩室を出ると、先の廊下にリュカが立っていた。
Γ………ローレンに付いて行ったかと。」
Γパレードの警備は万全です。問題は王宮の…」
Γえ?」
Γいえ…何でも」
リュカは、私をじっと見て一歩足を進めた。
警戒して、私は立ち止まったままだ。
Γ何か用なの?」
Γ……ミヤコ、気分はどうですか?」
無表情だが、どこか面白がっているような口調に、私は気付いた。
Γ………リュカ」
Γ昨夜、面白い夢を視ました。内容は…ああ、あなたはその先の未来を信じるのでしたね。」
Γリュ、リュカ、あの…」
Γ別に何もしません。ただ大切になさって下さいね。」
一方的に言い、リュカはさっさと行ってしまった。
Γあ…」
つい色々聞きそうになって、口をぱくばく動かしてしまった。でも、リュカの言動はやはり…
Γミヤコ」
Γは、はいっ!」
いきなり背後から呼ばれて、どきっとなった。振り向くと肩を掴まれ、ルーが私の顔を見下ろす。
Γお前、大丈夫か?」
Γん?」
不機嫌さは鳴りを潜め、ルーは心配してくれているようだった。
Γ………魔法使いは、病気はしない。それが吐き気を催すなど普通じゃない。」
私の頬に手の甲を当て、顔色も悪いと呟く。
Γ俺の顔見てどうこうじゃないなら、お前休んだほうが…」
Γ大丈夫。」
ルーの手首を持って、そっと下ろして私は安心させようと微笑んだ。
Γちょっと疲れただけよ。」
その時、ローレン達の帰還の合図の鐘が鳴った。
Γさ、行こう。」
Γ………」
眉を潜め、ルーは私を抱き上げた。
Γきゃあ」
Γ無理はさせない。」
Γ大丈夫だから…」
再び謁見の間に、私はルーに抱き上げられたまま登場するはめになってしまった。
たくさんの人々に目撃され、その後しばらくは冷やかしと羨望の意味を込めて『仲良し魔法使い夫婦』と言われるようになった。




