御前試合8
Γミヤコを傷付けたな。」
悪名高き魔法使いが舞台に立ってからの第一声はそれだった。
しん、と静まった観客のことなど気にも留めず、ルーはリュカと対峙している。
Γだから何ですか?」
濃緑に金糸の刺繍が鮮やかな服に着替えたリュカは、私に怪我を負わされたことなど忘れたように涼しい顔をしている。
ローレンに確認したら、リュカは私達の宣伝に利用されていることには気づいている。私に負けても尚、ルーと戦うことを選んだのはリュカ自身の気持ちの問題だろう。
Γ…………」
赤い瞳が禍々しく輝いた。
何の予備動作も無くルーが翔んだ。リュカが間髪入れず光の玉を放つ。
ルーは結界を張ったが、それが一度の攻撃で霧散する前に翔ぶ。
リュカの目の前に翔んだところで、炎を至近距離で頬めがけて放つ。
Γまずは頬」
火傷で赤くなった頬を庇うリュカに、素早く拘束の魔法をかける。
解くことに意識が向いたところを、 足を払って倒す。
Γくっ…」
Γ次は腕。」
うつ伏せのリュカの腕に、ルーが片足を乗せる。
Γううう」
ぐぐっと体重を掛けたルーが、ぐりぐりと左右に足を動かす。
Γぐ…」
痛みに顔をしかめなから、振り向き様にリュカが雷の魔法を落とそうとした。振り向く時点で、避けて翔んだルーは、距離を保って舞台に足をつけた。
Γまだだ。」
指先に炎を遊ばせて、ルーは残酷な笑みを湛えている。
Γなあ、もっと酷いことを貴様はしたよな?」
私に向ける表情とは偉い違いだ。つい当たり前のようなつもりでいたが、ルーの私への甘い態度こそ奇跡に近いのだと、見ていて気づかされた。
Γ…ローレン、あまりにも酷いようなら私が止めるわ。」
Γ………さっきも似たようなことを、誰かさんに言われたよ。」
隠しきれない不安そうなローレンの声音。私はいつでも割って入れるように身構えて見守る。




