御前試合6
割れんばかりの歓声と拍手の中で、私はホッとして笑った。感じ取れる観衆の感情は、思ったよりも私に好意的だった。中には知りたくないような感情を抱く者もいるが、これから先の私達の行動によって変えられることもできるだろう。何せ先は長いのだから。
Γルー!」
貴賓席の途中の通路にルーを見つけて、思わず駆け寄った。
Γね、ね、観てくれた?」
つい嬉しくて、彼の片手に腕を絡めてはしゃいだ。
Γリュカが雷の魔法を使うのは知ってたから、そのまま彼自身の魔法を返したらどうかと思って。私の魔法よりもリュカの魔法が強いでしょ?だから、彼の魔法を利用してみたの!」
くいっと私の顎に指をかけて顔を横に向かせて、ルーは私の頬を見ていたけど、興奮気味な私は喋り続けた。
Γゴムは電流を通さないし、雷のことをわかっていたら、そんなに恐がることでもないから。あ、雪はカムフラージュなの。水にして、溜めた雷を通して…うひゃあ!!」
頬の傷があったところを、ルーの舌がペロッと舐めた。驚いた私が何の動きもできないでいたら、こびりついた血を丁寧に舐め取られた。
Γだ、大丈夫だから!もう怪我治ってるから!」
今度は腕の掴まれた辺りを、袖をめくって確かめられる。強く掴まれ赤くなった肌が治りかける途中だった。
Γあの野郎…!」
低く呟かれた悪態に、ぎょっとなる。
Γ治ってきてるから、だ、大丈夫だよ。」
私の腕に唇を押し付けるルーの肩を、やんわりと片手で押しやる。すると、腰に手を回されて身動きできない。
Γルー…」
Γ何度も何度もミヤコに触りやがって…!」
え、そこ?そこなの?
Γえ、あの…」
Γじっとしろ!全部清める…」
腕に吸い付いたままだ。肌の赤みが消えるのを待っているらしい。
は、恥ずかしい!公共の場でこんな…
Γお取り込み中申し訳ございません、ルシウス様…」
案の定、私の背後からローレンの護衛の一人が声を掛けてきた。
Γ何だ?」
ちゅっ、と音を立てて唇を離したルーが苛立ちながら応えた。
見られたあ!
羞恥で俯く私の腰を抱いて、ルーは離してくれない。
Γ先程の試合で、ミヤコ様の勝利で決着はつきました。だが、もし気が乗るようであれば、ルシウス様におかれましては試合に出場していただきたく…」
Γいいだろう。」
静かな声が恐い。
Γよろしいので?」
Γ当たり前だ!……ぶっ殺す」
ぎらりと凶悪な目をして、ルーが早足で舞台に歩いて行く。
Γルー!」
Γお前の仇は討つ。」
Γいや、死んでないから!ちょっと、ルー…」
かなり怒ってるみたいだ。私の声もあまり聴こえてないみたい。
仕方なくルーの後ろ姿を見送る。
Γルー、殺しちゃダメだから……」