御前試合3(ルー視点)
Γ…っう!」
一般の観客席より一番高い場所にあり、隔てられた貴賓席。
ローレンの襟首を掴み、壁に押し付ける。
数秒遅れて護衛達が一斉に刃を向けてくる。
Γ剣を、ぐ…下ろせ」
薄く目を開けたローレンが、護衛達に命じる。それから苦笑しつつ俺を見た。
Γ君が怒るのは、仕方ない」
Γ……ルルカ王貴様、なぜミヤコを出した?俺は拒否したはずだ。」
Γわかったとは言ったが、言うとおりにするとは言ってないよ。」
更にぐっと襟を締め上げると、苦しそうに目を瞑るが、抵抗はしない。
数日前、ミヤコを留守番させ、俺はこの子供に話をしに行った。
ミヤコより先に自分が戦うこと。要はリュカに勝てばいいのだから、彼女が出ることはない。
Γミヤコは魔法使いだが、生まれつきではないし、力を持って日が浅い。数百年魔法使いとして生きるリュカよりも、圧倒的に経験も使い方も未熟だ…と俺は言ったはずだ。」
Γ……手を、放せ、これでは話せない」
舞台の方を見ると、雪が降りだしている。ミヤコがこれからどうする気か、詳しくは聞いてない。
ぱっと手を放すと、ローレンが咳き込みながら床に座り込む。護衛達に助け起こされながらも、ローレンは泣くこともなく平然としている。
Γ……君が気にすることは無い。僕はミヤコが負けても、彼女を臣下として召し抱えたいと思ってる。何せ彼女の異世界の知識は貴重だからね。それにこれは試合だ。殺し合いじゃないから…」
何を言ってるんだ?
Γあいつが傷ついて、俺が平気だとでも?!」
ぎっと睨み付けると、ローレンは、えっ?と目を丸くしている。
Γ彼女は魔法使いだろう?怪我しても直ぐ治るよね?」
Γだが、痛みは感じる。血も流れる。苦しむ姿を見ることが、どんなに…」
自分が傷つくよりも耐え難い。それがわからないのか?
額に手を置いて、唇を噛み締める。
違う。わからなかったのは、昔の自分だ。
Γ……ルシウス。君は…」
微笑んだローレンが、舞台を見下ろす。
Γほら、ミヤコを見てあげなよ。彼女には君の応援が一番力になるんじゃないのか。」
歓声が上がり、はっとしてローレンの横から身を乗り出すようにして見下ろす。
Γミヤコ」
短剣を持ったミヤコが、舞うように雪を降らせる。白いドレスがふわりと翻り、幻想的な光景だった。
Γ彼女を信じて見守ってあげなよ。」
肘をついて、ゆったりと座ったローレンは、先程殺されかかったことなど微塵も感じさせない。
Γ…………耐えられなくなったら、俺が助けに入る。」
Γそれをミヤコが喜ぶかな?」
目を舞台に向けたまま、ローレンが言う。
いちいち堪に触るガキだ。
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