御前試合2
ふおっ、感想ありがとうございました!凄く優しい応援、感激です!
観客席が円形に囲った中心。普段は劇場として使われる舞台に私は立った。
あれほど騒がしかった人々が、私が姿を現すと静かになった。皆の視線が、頭から爪先まで注がれているのを感じて息が詰まる。
高い位置にある半個室のVIP席を見上げると、ローレンの横に立っているルーを見つけた。難しい顔をして、私と目が合うと軽く頷いてくれた。
深呼吸を意識しながら、再び前を見るとリュカが向かい側から舞台に上がって来た。
濃い青に銀の刺繍が施された長衣を身につけたリュカが、私を見るなり首を傾げた。
Γ何ですか、それ?」
ドレスではなく、手袋を嵌めた私が持つ短剣に目を留めたのだろう。
Γ余興に付き合ってもらうわ。」
鞘を付けたままの短剣をゆっくり横に薙いだ。
以前、桜の枝で魔法の練習をしたことを思い出しながら、短剣を掲げる。
ヒュオッ、と風が舞う。
小さく歓声が湧いたところで、空を見上げる。
晴れていた空は、いつの間にか曇り、天から雪が降ってくるまでになった。
ルルカは、雪はあまり積もらないらしく地面は乾いていた。私がいる舞台も野外で天井など無いのだが、普通に戦うには何の支障もない。
ルールは簡単で、この円形の舞台の周りは堀のようになっていて、舞台から外れて落ちれば負けだ。或いは、どちらかが降参するか深手を負ってしまえば負けと判断される。
Γ雪を降らせているのですか?」
私の行動を観察するように、リュカは攻撃を仕掛けずに見ている。水を操る魔法は、雨を降らすことが可能だが、冬の寒さ故に代わりに雪が降ってくる。
ちらちら降っていた雪が、次第に激しく降りだす。短剣を払ってドレスの裾を持ち、くるりと回る。
一度リュカと戦ったように、真っ向から攻撃を仕掛けるのは、前より半分の力しか持たない私には不利だ。
負けても勝っても、私達の宣伝効果にはなるだろう。けれど、するからには勝ちたい。折角もらったルーの力で負けたくない。
リュカが勝負を挑んだのは、世間に自分の実力を知らしめる意図があるのだろう。
自分が、現在の最高の魔法使いだと。
嫌だな。
新米でも、魔法使いとしての矜持みたいなものが芽生えていた私には、リュカにみすみす勝ちを譲る気は無かった。
半分とはいえ、仮にも最高の魔法使いの力。負けられない。