挑戦5
Γ俺が奴に負けるとでも?」
Γう…だってルーの力半分だし…」
Γ俺がリュカに勝てないなら、同じ半分の力のお前にだって、無理だろ?」
Γはい……」
しゅんと項垂れる私を、なぜかルーはずっと抱えた状態で下ろしてくれない。
Γ取り敢えず俺が先に出て、勝てばいい。」
Γ………ごめんね。でもローレンは、私達が勝っても負けても多分迎えてくれると思う。」
Γおそらくな。ちっ、チケットがどうとか言ってたな。俺やお前を民衆の見せ物にする気か?」
言われて合点がいった。そうか、リュカを納得させることに乗じて、私達を印象付ける思惑もあるのだろう。それなら、良い印象を皆に持ってもらいたい。
Γ私、出番ないかもしれないけど頑張るね!」
ぐっと拳を握れば、ルーが小さく溜め息を吐いた。
Γお前、あの国で働くことが俺のためだとなぜ事前に言わなかった?」
Γ経済的な目的なのも本当だったし、そんなこと話していたらルー嫌がるかと思って…」
後でこっそりローレンに頼もうと思っていた。ローレンに促されて勢いでルーの前でお願いしてしまったのだ。
Γ勝手にごめんなさい。も、もしルーが嫌なら私だけが…」
Γ俺もやる。」
ルーは私を見ていたが、すっと目を伏せ気味にして噛み締めるように言った。
Γ失念していたが、今のままだと俺の妻になったためにお前まで人から謗りを受ける可能性がある。俺だけなら別にいい。だが、お前まで悪く言われるのは許せない。だから、俺もやってもいい。」
それを聞いて、私は顔を上げた。
Γルー……怒ってない、の?」
遠慮がちにルーのこめかみに指を伸ばしたところで、急に床に足が着いた。伸ばした手をルーが掴む。
Γ………ガキの前に膝をついて頭を下げて、必死になって懇願して、それが全て俺の為で…なぜ怒れる?」
伏せていた目を開けて、ルーの瞳が私を映した。
手を引かれて胸に抱き締められる。
Γミヤコ、お前そんなにも俺が好きか?」
Γ……ルー」
私の指を掴んだルーの手からは、怒りなんて伝わらなかった。
Γわ、私、んっ」
返事も待たずに、唇を重ねられる。
ルーの手から喜びが溢れていた。
Γお前を、壊してしまいそうだ」
唇が離れて気づいたらベッドの上で、ルーが私の首元で囁いた。
私を労って、ただ抱き締めて眠る夜を過ごしてくれた数日。そんな彼が私を壊すわけがない。
Γルシウス…大丈夫、私壊れたりしないよ。」
Γ………バカ」
嬉しいことをそうやって誤魔化しているのかな。
両手でルーの頭を抱いてみる。私の髪にルーの指が伸び、頬に触れて唇をなぞる。首に当たる吐息が熱くて自分の体もどんどん熱くなるようだった。
こういうこと、私慣れるなんてずっと無いだろうな。
跳ねる心臓を感じて、そう思う。
Γ……大好きよ。」
私が傍にいてルーが幸せになれるなら、こんなに嬉しいことはない。
私の言葉に弾かれたようにルーがキスを求める。
服を脱がすのももどかしく、隠れた肌を滑る指に息を乱した。
Γ愛してる」
ちゃんと言葉で伝えられると、胸が震えて泣きたくなる。
欲張りな私は本当は、ずっとこのままこの愛しい人に貪られることを望んでいる。