挑戦4
Γ分かった、ルシウスの名誉の回復に尽力しよう。」
Γダメです。文書にして下さい。」
Γでは、契約書に追加文として記載しよう。」
Γ特別扱いはいらないわ。普通の新人と同じ扱いでいい。その後は、能力に応じて評価して欲しい。あくまで王宮に仕える人間と同等の扱いでお願いします。」
Γつまり、人間と魔法使いを同等に扱えと?はい、書いたよ。」
Γ……署名もお願いします。……周りと同じように働けば、印象も変わるんじゃないかと思うから。ルーがこれほど長い時間、悪い印象を持たれていたのは皆が彼をちゃんと知らなかったから。だから、皆に見て知ってほしいの。ルー自身が無理なら、私でもいい。私がルーの家族としてローレンに仕えるだけでも、少しは見る目が変わればと…」
焦れたように、後ろから腕を引っ張られた。
ルーが静かに言った。
Γもういい、立て。」
Γ待って!捺印もお願いします。それと最後にここに書き足して。」
Γ何を?」
Γルルカとグラディアに仕える全ての魔法使いは人間と同じように、その人権、生命、名誉が守られることとし、安全を保障すると。」
Γぷぷっ、ミヤコ、本当に君は…!」
私の鬼気迫る様子に、ローレンが我慢できないと言った感じで笑いだした。
Γわかったよ!大丈夫、僕は臣下を平等に大切にする。ああ、参ったよ!」
くすくすと笑いながら、ローレンはリュカに顔を向けた。
Γね、もう認めなよ。こんなに可愛い魔法使いを受け入れないなんて勿体無いよ。」
リュカは表情を崩さず、膝をついたままの私を無理やり抱き上げたルーを見た。
Γ………ルシウス、勝負しましょう。」
Γ何だと?」
Γ私が勝ったら、この件は無かったことに。あなたが勝ったら、ローレン様に仕えることを認めます。」
ローレンが困った顔で呟いた。
Γえー、もうこれ以上グラディア国庫の使途不明金出したくないんだけど、まだお給料で正式に渡す方がいいよ。」
Γちっ、知ってたか…」
やっぱりルー、掠めてたんだ。
じとっと見つめると、ふいっと視線をかわされた。
Γまあいい、どうする?それでリュカが納得するなら勝負を許そう。場所はセッティングするよ。」
Γいいだろう。」
Γ本当にいいんですね?今のあなたは、以前の半分の力で戦うことになりますよ?」
Γそれなら互角に戦えるな。」
Γ…張ったりを…」
これはとても不利だ。力を半分ずつ分けあっている私とルーは、リュカよりも幾分魔力量が劣っている。
余裕そうにルーは言うが、これは難しいんじゃないだろうか。
Γ私も出るわ。リュカ、私かルーのどちらかが勝ったら認めてもらう。それでいい?」
Γいいでしょう。手加減はしませんよ。」
冷たくリュカが言えば、傍らでローレンは機嫌良く何か指を曲げて計算している。
Γこれは儲かるね。急いでチケット作成しなきゃ…あ、本気で殺しあったらダメだよ!親子連れ可にするからさ…えっと、衣装に照明に…」
Γ……………ミヤコ」
低く静かなルーの声に、恐る恐る見上げると、ルーの無表情になった顔がこちらを見ていた。
Γえっと、勝手に決めて……ごめんなさい。」
Γ……………」
何も返さないルーに、そろそろと下を向く。
ヤバイ、怒ってる?!
魔法使い同士、手とか触れないと直接気持ちが読めなくなっているが、今の雰囲気で触れる勇気は私にはない。
Γルー……」
Γ………バカ」
ぽつりと言われて目を瞬かせた時、ローレンが手を振った。
Γよし、半月後に試合を設ける。詳しいことはリュカに連絡させるからね。」
Γ…………」
それを聞くや否や、ルーに抱えられたまま私は帰宅することになった。
ルーに怒られたら、絶対泣くと思った。




