挑戦3
執務室に再び移動した私は、リュカと向かい合う形で座っている。ルーは座る私の横に立ち、窓の方に目を向けたままだ。
Γその契約書の通り、私はこの力を医療や福祉の方面で行使する。私の元の世界の知識も、きっと役立つはず。ルーは…」
Γそれについては僕が推薦する。王直属の私設部隊に所属し、僕の警護や国の防衛に当たって欲しい。」
Γ……………」
不満そうに黙って眉をしかめるルーにひやひやしつつ、主に私とローレンが話し合う状況になっている。しばらく一通り聞いていたリュカが、低く言葉を発した。
Γ……私は認めませんよ。」
Γリュカ」
Γ当然でしょう?特にルシウス、あなたがこの国に仕出かしたことを皆は覚えているのですよ。受け入れるわけないでしょう?」
冷静にそう言ったリュカが付け足すように言う。
Γそれとも…償いのつもりですか?」
Γ貴様…」
ぎろっとリュカを睨むルーの手首を慌てて握る。
Γ違うの、私が決めたことで…!」
ローレンは、リュカを見てから私とリュカの間に立つようにして言った。
Γ君達は僕の臣下だ。互いにいがみ合うことは許さないよ。それにリュカ、お前の夢は何だった?これは僕やリュカの夢に近づくことを意味しないか?」
Γローレン様」
ぐっと言葉を詰まらすリュカを横目に、ローレンは私に優しく聞いてくる。
Γミヤコ、君はなぜ数ある国々の中で僕の国に仕えたいんだい?今の君達なら引く手あまただろうに。」
Γ……私は、あなたを知ってるし恩がある。あなたはきっと世界をより良くしてくれるはずだから。」
Γ光栄だね。」
ローレンが、照れたように言った。
Γそれに魔法使いであるリュカがずっといるこの国は、他の国より魔法使いに馴れてるかと……」
Γ君に関しては問題ない。だが…」
考えるように顎に手を添えたローレンが、少しして、はっとしたように私を見つめた。
Γ………ミヤコ、君がこの国に仕えたいのは、もしかしてルシウスのためかい?」
しっかりと頷く私を、ルーが怪訝そうに見ている。
私は自然に体が動いて、椅子に座るローレンの足元に両ひざをついた。それから目を反らさずに王を見上げて願った。
Γ……陛下、お願いです。ルーの、私の夫ルシウスの、名誉の回復にお力添えをどうかお願い致します。」
Γそれが君の本当の願いなんだね。」
もう一度頷いてから胸に手を置いて、私は深く頭を下げた。
魔法使いの私でもできないことだ。だが、王であるローレンにならできる。少しづつでいい。私達は長い時を生きるから、いつかは…
Γ私、ルーを幸せにしたい。だから大罪の魔法使いなんて呼び名を消し去りたいの。」
ルーがルーでも、どこにいたって堂々と生きていられる世界にしたい。今より優しい世界にしたい。
Γ私……この姿のままでルーと、いつかこの国を歩きたい。だから……」
Γミヤコ、お前は…」
呻くように呼ばれて、後ろから抱き締められる。肩を抱く手に手を重ねて、力を込めてぎゅっと握った。
大丈夫、私があなたを守るから。