表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/207

挑戦2

出ようと思えばすぐ出られる清潔な牢の鍵が開けられた瞬間、炎が飛んだ。

直ぐに結界を張って防いだリュカの前に、ルーが翔んで来て拳を振り上げた。


Γつっ!!」


ルーに素手で顔面を殴り付けられたリュカが、勢いで倒れた。

唇が切れて血が垂れるのを手で拭い、リュカはゆっくりと見上げる。


Γ……本来なら、この程度で許すわけがない。貴様はミヤコを傷つけたんだから…」

Γああ、力をやはり返してもらったのですね。」

Γ違う。」


訝しむリュカから踵を返し、ルーが私の傍に戻って来た。


Γミヤコ、手を下ろせ。」

Γは…」


同じように拳を振り上げて固まっていた私は、ルーの声で我に返った。案内されて、私達はリュカのいる牢にやって来た。そしてリュカの平然とした表情を見た瞬間、これは一発殴らなければと怒りが沸き上がったのだ。

ルーの方が早かったが…


私の拳をルーの手が包み、ゆっくりと下ろされる。


Γお前が殴って、あんな奴のためにそれ以上傷つくことはない。」


泣きそうになるのを堪えるために、ルーの胸に顔を引っ付けると背中を撫でてくれた。

それから私の頭を片手で抱いて、ルーはリュカを見下ろした。


Γ俺とミヤコは、力と命を半分ずつ分け合った。貴様の予知は、やはりたいしたことがない。」

Γそんなことができるのですか?」


興味深げなリュカに、なんだか腹立つ。

隅で傍観していたローレンが、護衛の兵と共に私達の近くに来た。


Γ取り敢えずリュカ、恩赦により牢から出ることを許す。」

Γは?恩赦?」


分からないといった表情のリュカに、ローレンがにまにまと笑う。


Γだってめでたいし、めっちゃ珍しいことだよ。魔法使いが魔法使いと結婚だなんて稀だよ?」

Γ貴様の予知は、ここまで見据えていたか?所詮俺の未来など、他人の貴様がどうこうできるものではない。ざまあないな!」


得意気にルーが、見せつけるように私を抱き締める。さすがに驚いたのか、リュカは少々目を見開いている。

なぜ私達のことで、敵の立場だったリュカが解放されるのかは、私には甚だ不服だったが仕方ない。これも今後の人生設計のためだ。


Γそれで、どういうことです?まさか私を嘲るためだけに来たのですか?それとも、今度こそ私を殺すために?」

Γああ、そ…」

Γ違うわ。」


ルーの言葉に被せて言うと、私は立ち上がったリュカの前に立った。


Γ私とルーは、ルルカとグラディアのために働く。だから今後のために、あなたにも認めてもらう。」

Γどういうことです?」


ローレンが頷くと、控えていた侍従がリュカに書類を渡す。

素早く目を通したリュカは、やがて冷笑を浮かべた。


Γ……ルシウスがミヤコ、あなたと共に専属魔法使いとなると?」


私は睨むようにして、リュカに無言で頷いてみせた。一筋縄ではいかないのはわかっている。

けれど私は、一番の目的のために絶対に諦めない気持ちがある。経済的なことじゃない、本当に私が望むことはここでなら叶うはず。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ