新しい朝2
Γ魔法か?魔法なのか?」
Γ違います。」
ル―の作ったかなりの量の朝御飯を、私はほぼ食べ切った。やはり残すと思ったのか、そんな私にル―は愕然として呟いた。
Γお前のどこにあの量が…」
Γだって美味しかったから」
唇を尖らせつつ洗い物をして、髪を櫛で漉いていて、はっとした。
そうだ、イヤリング。
向こうの世界から来る時にワンピースのポケットに入れていたのに。たった一つだけ持って来た大事な物。
慌ててワンピースを探すが、既に洗われて速乾されて椅子にかけられていた。ポケットを探るが何もない。
Γミヤコ」
Γふえっ…無い」
Γ泣くな、ほら手を出せ。」
ソファーに座っていたル―は、うなだれる私を抱き寄せて手を掴んだ。
その手の平に何か握らせてきたので見ると、両方揃った状態のあのイヤリングだった。
Γあ…」
Γ俺が持っていた。」
ソファーに座り、じっと手の平にあるイヤリングを見つめた。
Γ私、片方無くしたかと…」
Γずっと持ってた。」
隣に座り、片手で私の頭を胸に抱き寄せて、ル―はあさってのほうを向いて言った。
Γ…良かった」
とても大事な物だ。ル―が贈ってくれたイヤリング。向こうの世界にいた時も、これがル―と私を繋いでくれているような気がしていた。心の支えと言ってもいい。
ぎゅっと両手に包んで、私は唇を押し当てた。
その途端、私の頭を抱いていたル―の手が肩に滑り、包むように抱き締められた。
Γル―?」
Γ………」
見上げると唇を塞がれ、少ししてそのまま私の髪に顔を埋める。
Γ返せたな」
Γん」
思いがけず真剣な口調で、ル―は何だか安心したように言う。
私はルーの鼓動を聴きながら思った。
離ればなれになっていた時、ルーはどんな想いで片方のイヤリングを持っていてくれたのだろう。
私が想うように、彼も想っていてくれたのだろうか。もしかすると、私が思う以上にル―は、私を想っていてくれたのだろうか。
Γルー」
Γ何だ?」
私の髪に顔をくっつけたまま、ル―が聞く。
私はどうしたらいいだろう。
ル―の愛情をはっきりと感じている今、私はどうやって彼に応えたらいいだろう。私は同じように想いを返せているだろうか。
Γ大好きよ」
Γ……そうか」
私と出会う前の彼の孤独を思う。過去の彼を癒すことはできないけれど、その分今の彼の傍にいたいと思う。
手を伸ばして背中を撫でた。
ル―をもっと幸せにしたいと心から思う。