あなたと6
Γ…………………………………………………………………………………………」
沈黙が物凄く長く感じる。
私はルーの顔なんて見れなくて、俯いて膝に置いた手で服をぎゅっと握った。
通じなかったかな…もっと直接的な言葉を言ったら良かった?えっと、わ、私をだ…ムリムリ!うわあ、どうしよ!逃げたい!あ、お腹空いたって言う?いや、なんか情けないし、おかしい。あ、この服新しい。また買ってくれたのかな?待って、し、下着は?下着も新しいの?!
Γふわっ」
私が現実逃避していたら、停止していたルーが、ようやく体を起こして私をやんわりと抱き締めた。それから私の片手を取って、甲にキスをした。
Γ……俺は、家族と別れてまで戻って来てくれたお前を幸せにできるかわからない。長い年月、お前は俺に縛られるだろう。俺は自分の欲を優先する酷い奴だから、お前をもう一生絶対に離さないだろう。だから、お前を幸せにするなど、高尚なことは言えない。だが…」
ルーは私の手を自らの頬に押し当て、言葉を探していた。
Γ誓うとするなら…ミヤコ、俺の唯一だ。俺はきっとお前しか愛せない。お前が傍にいる限り、俺は幸せだろう。」
だから、妻になって欲しい。こういうのはこっちが言うものだろう。
つけ加えるように、ぼそぼそとルーが言う。
こんなふうに言われて、心が震えないはずがない。身を乗り出すようにして、彼の首に腕を回してしがみついた。
Γ私、幸せだよ。」
Γならいい。」
背中を支えたルーの手が、私をベッドに横たえた。襟元を結ぶリボンが解かれて、胸の谷間まで見えて再び羞恥が押し寄せた。
Γあ、あの!私、その、知ってはいるけど、は、はじめてで」
Γ知ってる。」
Γむ、むね、おおきいよね!はずかしい!」
Γそれがどうかしたのか。…最高だ。」
Γえ、は?ええっと、あの…あの…」
Γ今度は何だ?」
Γ………い、痛いの?」
Γ……心配ない。」
Γうう…」
どうしても少し怖くて、震える指を噛む私に、ルーは宥めるように頬や額にキスをした。それから自分の服を先に脱いだ。
Γ寒いからな。暖めて欲しい。」
そう言って、私をぎゅっと抱き締めた。男性らしい固くてしなやかな体で、触れ合っているところの肌が暖かくて気持ち良くて、私はほっと息をついた。
私が緊張を解いて力を抜いたのを見計らい、ルーが、ゆっくり服を脱がせながら唇にキスを繰り返す。
Γん…ふ…」
目を閉じて、ぎこちなく応えて、彼の唇を食んだ。首を舐め、鎖骨にキスされ、びくりと体を震わすと、ルーの指が胸の横を辿り脇腹を撫でた。
Γふ、ふっ、くすぐった」
くすぐったくて身を捩って笑ってしまい、そうしたら恥ずかしさも消えていった。
笑った私の唇に、またキスをしてルーが言う。
Γ俺の名を呼んで欲しい。」
Γルー……ルシウス」
Γそう」
Γルシウス」
真の名前。両親ではなく、自分を殺そうとした育ての親が付けた名前。ルーが、この名前を嫌っていたのを私は薄々知っていた。だから私にルーとだけ呼ばせていたこと。
でも今、私に真の名前を呼ぶことを望むなら、たくさん呼んであげたら、自分の名前好きになってくれるだろうか。
私はそっと指を伸ばした。意図を汲んだルーが、ためらいながらも自分の指を絡めて握ってくれた。ルーの心を感じ取りながら、私は彼の熱っぽい瞳を見つめた。
Γルシウス、あなたに出逢えて良かった。」




