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あなたと

水深は膝上ぐらいの流れの緩やかな小川だった。頭から水を被ってびしょびしょの私は、ルーに担がれるようにされ岸に上げられた。


Γううー、寒い」


ポタポタと滴を垂らす髪を手で絞り、濡れて腿に まとわりつくワンピースの裾を絞る。


Γもしかして、お前翔ぶのがへ、た…」


髪を掻き上げる仕草も色っぽくルーが言いかけ、不自然に黙った。その視線を辿れば、裾を絞っていた私の太腿を見ていることに気付いた。

素知らぬふりをして慌てて隠すと、乾燥の魔法を使った。


Γ……俺を、試してるのか?」

Γん?」


小声で言われたことに、私はとぼけた。


Γ………」

Γ………」


わざとじゃないけど、無防備だったことを自覚して、何とも言えない空気が漂う。


Γあー、ごめんね。私翔ぶの苦手で…」


話題を切り替えて、ルーの手を握る。


Γもう一度、翔ぶね。」


降り立った先は、雪深い平原のような所だった。


Γうわ、わ」

Γ…やはりか」


今度は腰まである雪に埋もれた私を、ルーが再び担いだ。近距離を翔ぶのは支障なく、目視できた雪の浅い大きな木のたもとまで移動する。


Γ……帰れるのか?」


膝まで雪に埋もれたルーが疑い始めた。私が遠距離を上手く翔べないのは、この世界の地図をあまり見たことがないからだ。国や大陸の位置を大まかに頭の中に入れたら、翔びたい場所を絞って翔べる。でも、私ははっきりルーの島の位置を知らないわけで…


Γ風景とかをヒントに翔べるかなあと思ったけど、ダメみたい。」

Γどうするか…」


雪の冷たさから、私を下ろさずにお姫様抱っこに変える。


Γまあ、お前がいるならどこでもいい。」

Γ……ルー」


あっさり言われて、それに押されるように私は意を決して聞いた。


Γルーは、私が魔法使いのままで、自分が人間で嫌じゃない?」

Γ何だ、急に?」


怪訝そうに私を見下ろしたルーだったが、直ぐに答えてくれた。


Γそれでいい。俺が魔法使いで人間のお前に置いて行かれるぐらいなら、その逆の方がマシだ。」


首に手を回した私の髪を撫でて、ルーはわざと意地悪く言う。


Γ俺はお前より多分弱い。お前に置いていかれて一人で悠久の時を生きることに耐えられないだろう。だから、俺はお前より先に逝く。」


俺は酷いだろう?

薄く笑うルーに、首を振る。今ならわかる。

ルーが、それほどに愛してくれていること。


Γルー、私は一緒に生きたい。ずっとずっと、いつか死ぬ時まで…。どちらも互いを置いて逝かないように、それまで一緒にいてもいい?」

Γ……何?」


きっと上手くいく。その予感に私は微笑んだ。


Γ力を、半分ずつ分けよう」

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