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指先に想いを6

肩に何度も唇の感触を感じて、甘い雰囲気に呑まれるようになっていた私だったが…


Γあ、あの、ルー、ちょっと…」

Γ………」


魔法使いとして、気配に敏感になった私は気付いてしまった。ルーが突き飛ばしていた女の人を始めに、たくさんの人が私達を遠巻きに見ていることを。


Γちょっ、や、やめ!」

Γ………」


恥ずかしくてルーの胸を押すと、更に抱き込まれてしまった。


Γみんな、見てるから!」

Γ別にいい。」


ええ!?私は、恥ずかしいよ?


驚いている人や戸惑っている人はいいとして、若い女の子が顔を赤らめてきゃあっとか言ってるし、小さい子が私達を指差してじいっと見てる。

にやにや笑ってるおじいさんの横で、さっきの女の人は悲しそうな顔をしている。


Γ………ルー、帰ろっか?」


彼らの感情を感じ取れば、不思議な感慨が湧いた。私の知らない間にルーは、他の人と少なからず絆を結んでいたんだ。ルーがそれを望んでいなくても、そうやって知らない内にも人は人と関わって生きている。

ああ、私嫉妬してる。彼を押していた手を止めて、腕の中で彼の胸に頭を預けた。


Γ長い旅をしたな。」


私の肩に自分の上着を羽織らせて、ルーがようやく顔を上げた。にやにやしているおじいさんが、帰るのかと聞いてきた。

頷いたルーは、そちらを見ていた私の額に顔を寄せて見せつけるようにして、にやりと笑った。


Γいい女だろ?」

Γな、な…」


真っ赤になった私をよそに、呆れた顔のおじいさんが手で追い払うような仕草をした。


Γ世話になった。」


ルーが殊勝なことを言い、私の手を握った。


Γミヤコ、帰るぞ。」

Γうん」


周りの人達に会釈をしてから、私はルーを見上げた。

本当に長かった。ようやく〈帰れる〉

長い睫毛を伏せ気味に私を見下ろすルーは、男性的な色気まで漂っていてずっと見つめていたいぐらいカッコいい。

ドキドキしながらルーの手を引き、私は翔んだ。


ドボン


そうして、どこかの川に落ちた。


Γごほっ!な、何だ!?」

Γごめっ、げほごほっ」


新米魔法使い。私は翔ぶのがとても下手だった。




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