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指先に想いを3

凍えるような冷たい風の中で、私は自分とルーの結界を張り直した。動かない建物などに結界を張るのは時々メンテナンスすれば持続するが、生き物に結界を張れる時間は限られる。それが動くものであるから、結界も弱くなるのが早いのだ。それに結界を張る魔法使いの力や集中力にも左右されやすい。

そう、私はまだ結界を張りながら攻撃したり翔んだりすることが上手くできない。一つのことに集中していたら、他の魔法を使うのが遅れる。


リュカを挑発したまではいいが、内心不安と焦りで泣きそうだ。


Γ…………」


険しい顔でルーが私達から距離を取り、私の背後の方へ回ってくれた。彼を逃がそうかとも思ったが、きっとリュカはその余地を与えないだろう。


じりっと足に力を込めて、私は先に行動した。リュカの横手に翔ぶと、至近距離で炎を放つ。リュカは、それを結界で弾くと代わりに拘束をしかけてきた。


Γくっ…」


同じように防いだら、間髪入れずに稲妻が降り注ぎ、慌てて避けようとしたら腕を光が突き抜けた。


Γああっ!」


血の流れる右腕を、左手で庇う。私が痛みに気を取られた隙に、リュカはルーに光の玉を繰り出した。

ギィン


金属音のような高い音を上げて、ルーを護る結界がそれを弾く。リュカは無表情のまま、立て続けに魔法を撃ち込む。


Γルー!!」


ルーはその様をじっと見ている。

私がリュカに魔法を放つ前に、リュカは一度こちらを振り返り、拘束を放った。


Γっ!」


翔ぶことでそれを避けた私は、リュカがルーに再び放った稲妻を、自分を盾にしてまともに受けてしまった。


Γきゃああっ!!」

Γっ、ミヤコ!」


倒れながらもリュカに風を放つと、彼は肩から血を流して五メートルほど下がった。

地面に手をついて、息を乱して俯く。


Γ…………バカ」


苦しそうな声がしたと思ったら、背後から抱きすくめられた。腰を支えるようにして私を立たせたルーの手が、そっと私の両手に触れた。


Γあ…」


ぴくりと震える私の耳元で、ルーが落ち着いた声を出す。


Γしっかりしろ。俺の力でリュカに負けることは許さない。俺を、自分を信じろ。」

Γっ、う…」


背中にルーの存在を感じながら、私は言葉が上手く喉を通らなかった。

両手を彼に握られて、溢れてしまった涙を拭えない。

私の手に触れたルーの指先から、彼の想いが突如として私に流れ込んで、心が震えるようだった。


太刀打ちできない。きっと私の想いなんて、ルーには及ばない。


こんなにも私を愛してくれる…

ルーの想いを言葉や行動よりも、もっと深いところで感じた私は、身動きできずに嗚咽を堪えて涙を流すことしかできない。

嬉しくて…


あ、このまま死んでもいいかも…と少し思った。


ブクマありがとうございます。執筆の力になってます。

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