ルルカにて
「それで、我が国所有の船を十二隻沈めたのに見合う価値があるのかい?見たところ普通のお姉さんにしか見えないけれど。」
ルルカ国王ローレンは、リュカに疑いの目を向けた。今後のルルカの利益に成りうると言われて、リュカに船を出す許可を与えた。
その全てをルーによって、燃やされ沈められてしまった。
幸いにも、死傷者はいなかった。最小人数の人員だけしか伴わず、リュカは彼等を無事に連れ帰っている。
「結構損害なんだけど?」
「申し訳ありません。」
「…これで予知を違えたら、ホントに怒るからね。」
11歳の少年王は、それでもリュカとリュカの予知に信頼を置いている。彼の予知は外れない。
見たいものが見られる訳ではないが、彼が眠っている時に見る夢のような予知は、必ず当たるのだ。
これまでもそのおかげで、ルルカを襲った豪雨による水害は、事前に避難ができて大事に至らなかったし、流行り病には薬を備えることもできた。
だから、今回もリュカを信じた。
それが、最高の魔法使いであるルシウスの元から、未来の最高の魔法使いとなる娘を救出する、という疑わしいものでも。
「ローレン様、きっと貴方の得になることです。お許しください。」
正直、子どもである自分を、リュカは王である前に庇護すべき子として見ている節がある。舐めてる訳ではない。リュカは自分の父と共に、代々ルルカに仕えてきた。
数百年に渡って、自分より力の無い人間に臣下の礼を取り続けていてくれる。
きっかけは、彼の父が、初代王の性根に惚れ込んだことが始まりらしいが。リュカは、ローレンが初代に似ていると、可愛がっているぐらいだ。
幼くして、病で両親を亡くしたローレンに、リュカは時折親のように接する。
「わかったよ。でも、一応聞くよ。私怨じゃないよね。」
「…いえ。」
無表情の顔が強張ったのを、王は見逃さなかったが、それ以上は問わずにおいた。
「まあ、いい。何にせよ、ミヤコが来てくれて嬉しいから。」
黒髪黒い瞳の女性を見たのは、初めてだった。
この世界の人々とは、少し趣の違う顔立ち。色白で小柄で、こちらの基準と照らし合わせて、愛らしい美女に当てはまるだろうミヤコ。
彼女を見た時、ローレンには予感がした。
リュカはホントに、ミヤコが最高の魔法使いとなるからという理由だけで、彼女を召喚したのだろうか?
リュカは、意地悪だな。