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予知のその先(ルー視点)6

Γふへっへ、冗談じゃよ、ルシウス様。」

Γジジイ…」


ヤクトと名乗った老人は、山の麓の村長だという。反対の麓側の村で会合があり、帰る途中だったらしい。


Γいやあ、転んで頭を打って目を回したらしい。ほれ、額にコブがある。」

Γ一人だったのか?」

Γ一人だったさ。小さな村だし、お付きの者なんて連れてるもんか。まあでも、あのまんま眠ってたら、永久に眠るとこだったなあ。あんたには礼を言わねばな。」

Γそれは残念だったな。折角の眠りを邪魔したな。」

Γほっほっほお」


このジジイ、飄々として喰えない。苦手な部類だ。

鍋のスープを木のおたまで混ぜる。ヤクトが荷物から取り出した包みにはたくさんのレーズンがあったので、堅めのパンに切り込みを入れてそれを挟んだ。


Γ会合で出た茶菓子と土産じゃよ。」


ヤクトが他にも焼き菓子やら餡の入った饅頭やらを取りだしたので、半分もらうことにする。


スープとパンと菓子を食べる俺を、またもやじいっと見てくる。


Γ次は儂の質問する番じゃな。それで、あんたこんな所で何しておるんじゃ?」

Γ旅だ。」

Γこんな寒い所にか?魔法使いならパッと来てパッと帰れるじゃろうに。」

Γできない。」

Γどういうことじゃ?」


訝しむヤクトに、まだ俺の情報がここまで届いてないことに気付く。


Γこの世界から最高の魔法使いは消えた。俺はただの人間だ。」

Γほお、一体どうしてじゃ?きっかけは?」


きっかけ?


指についたレーズンをペロリと舐め、俺は唇をその指で拭った。


Γ……俺が、一人の女を愛したから…」


そうだ。そうでなければ、俺は人にはならなかった。


驚いた顔をしていたヤクトが、急にぽんっと手を打った。


Γなるほど、失恋旅か!!」

Γくっ、このジジイ!外で凍ってろ!」


俺が魔法を使えたら、このジジイは既に二回消し炭になっていただろうに。




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