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予知のその先4(ルー視点)

北国フーリカに雪が降る。夏は短く冬の長いこの国は、豪雪地帯ともなれば、人の背丈を越す雪が積もるそうだ。

幸いそこほどではないが、黒い土壌の色を隠すほどに白に染め上げられた山道を、俺は歩いていた。

フードを被り、防寒用の外套にロングブーツの出で立ちで、白い息を吐き、降り続く雪を見上げた。

これから更に積もりそうだ。暗くなる前に宿を見つけなければならない。


Γ野宿は…ムリか。」


魔法で翔ぶことができれば、絶海の孤島にある自宅に帰っているのだが。自らの足か馬車ぐらいしか移動手段が無いのは、なかなか大変なものだ。


今までどれだけ自分が身体的に楽をしていたか、旅を始めて身に染みてわかった。


山道を中程まで差し掛かった時、前の道にこんもりと小さな雪の塊があるのが見えた。

そこまで近付くと、軽く踏んでみた。


Γ……やはり人か」


手で雪を払ってみると、小柄な老人だった。

微かな落胆を覚えつつ、手のひらを意識の無い老人の胸にあて、呼吸で上下に動いているのを確認する。


まあ、なんとか生きているようだ。


それだけで立ち去ろうと思った。一歩離れたところで、迷いが生まれ立ち止まる。

こんな時、あいつはどうする。

山車の下敷きになるかもしれなかったのに、咄嗟に子供を庇ったミヤコなら…


Γ……あいつ、怒るだろうな」


ムッとした時の表情が浮かび、俺は少し笑った。


それから、かがんで老人の手を肩に掛けて起こした。おんぶは気持ちが悪かったので、そのまま肩に回した腕を掴み、腹の辺りを支えて歩いた。


老人の足がズルズルと白い地面に線を描き、ぐったりと頭を垂れている。

小さくて枯れ枝のように細いが、全体重掛けてきて、人間の俺には重く感じる。


Γやれやれ、とんだ荷物だ。」


こんなジジイと凍死は御免だ。

しばらく歩いて、道の横に山小屋を見つけて、俺は安堵した。

山小屋は人が住んでいないらしく古そうで、壁の木の板がめくれたり、入り口のドアノブは外れかけていた。

手が使えない俺は、ドアを足で蹴破り中へ入った。簡単に内側に開いたドアを閉め、囲炉裏の側に老人を手荒く下ろした。


背負っていたリュックからマッチを取りだし、囲炉裏に火をつける。それから雪で濡れた老人の服を嫌々脱がせて下着姿にして、買っていた寝袋を広げて老人に被せておく。


小屋の中は、薪があるだけで何もなかった。壁からすきま風が入っているのを確認し、タオルで塞ぐ。

囲炉裏のおかげで、部屋が暖かくなるのを待って、俺は外套を脱ぎフードを取り払った。


この老人は起きて、俺を見てどんな反応をするだろう。

囲炉裏に鍋を掛けながら、不安よりも好奇心を感じていた。

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