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予知のその先3(満視点)

満視点です。

Γはっきりとはわからないけれど、私に力を与えたってことは、多分ルーは逆に力を失って人間になってると思うの。人間になったルーが、どんな仕打ちをされているか…。」


そういう姉ちゃんは、本当はすぐにでも向こうの世界に行きたいのだろう、焦りを滲ませて口に拳を付けるようにした。


Γ……どうやって、その人は姉ちゃんに力を与えたのだろ?」

Γ私、ルーの血を飲んだの。多分それじゃないかな。」


そう言って唇に触れて頬を真っ赤にするのを見て、俺はこめかみを掻いた。

わかりやすい。


Γ召喚魔法を応用して、自分をあちらに召喚できたら……でも、魔法が上手くコントロールできないと、もし失敗したら50年は次の召喚魔法は使えなくなるの。とても難しい魔法だから、慎重にしないと……」

Γ姉ちゃん。」


戻るの既に決定かよ。


Γ悔しいよ。力の使い方も魔法の知識も、自然に身に付いてるのに、上手く操れないなんて。今、こんな時にもルーは…」

Γ姉ちゃん…」

Γ寂しいって…、私がいないと寂しいって言ってたのに」

Γ姉ちゃん!」


俺の強い口調に、姉ちゃんが驚いたように顔を上げた。その両肩を掴んで揺さぶった。


Γちょっと、皆起きるから、静かに…」

Γあっちの世界なんか行って、また皆を悲しませたいの?!」

Γみ、満」

Γあんなに心配させて、姉ちゃん平気なの?!どんだけたくさんの人に迷惑かけてるか、ちったあ考えろよ!」

Γごめん……」


俯いてしまった姉ちゃんに、俺はまだ怒ったまま言った。


Γ黙って行ったりしたら許さないからな。その事、父さんや母さんにちゃんと話せるの?」

Γ……ごめんね。」


声が震えている姉ちゃん。でも、姉ちゃんは知らないんだ。どれだけ父さんや母さんが悲しんでいたか、心配していたか。目の前で見ていた俺は、もうあんな姿見たくないんだ。


Γ姉ちゃん、ちょっとの間一緒にいただけの人を家族より選ぶの?今、俺がどんな気持ちか考えてみてよ。」


今にも泣き出しそうなのに、口を噛み締めて姉ちゃんは顔を上げた。


Γ満、ごめんなさい。」

Γ姉ちゃん!」


真っ直ぐに目を見て、姉ちゃんは真剣な顔で言った。それから、深く頭を垂れた。


謝ってるんだ。それでも、許してほしくて。

俺には、わかった。

50年に一度しか使えない召喚魔法なら、一度使って向こうへ行ったら、帰ってこれない。少なくとも、父さんや母さんが生きてる間に再び会うのは難しいだろう。

姉ちゃんは、今度こそこの世界に帰ってこないつもりなんだ。


鼻がつんとして、俺は嗚咽が出そうなのを我慢して立ち上がった。頭を下げたままで、肩を越えるぐらいにまで伸びた髪を揺らしている姉ちゃんを見下ろした。


Γ姉ちゃんの馬鹿…、なんで…」


怒りと悲しみでいっぱいで、俺はそれ以上言えなくて、姉ちゃんを一人にして立ち去った。

次回人間のルーはどうした? 器用さは変わらず

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