結末の果て6
Γ打算?今の俺は人間だ。恩を売っても何もでないぞ。」
瓶の水を迷いもせずにあっさりと飲み、ルーは息をついた。まだ熱はあるが、傷が癒えたなら直に下がるだろう。
Γいいさ。売ってて損はない。それにそれだけが理由じゃないと言ったろう。僕はリュカとは考えが違う。リュカのように君を排除すべきだとは思わない。彼が思うほど、君が悪い奴だとは思ってないからね。」
Γはっ、何を根拠に?俺のことなど何も知らないだろうに。」
自嘲とも思えるルーの小馬鹿にした言葉にもローレンは表情を変えなかった。
Γ……知ってるよ、君はミヤコを愛してた。人を好きになれる心を持っていた。」
Γ………」
Γグラディアで王妃の洗脳を受けたミヤコを助けたね。その前も、行く途中に刺客から彼女を守った。子どもの僕がわからないとでも?君が随分前から、ミヤコを好きだったのは知ってたよ。」
ローレンは、目を逸らして表情を曇らせるルシウスを興味深く眺めて言った。
Γ僕は、そんな君が嫌いじゃないから助けたい。それに君がここで終わったら、友達であるミヤコに顔向けできないからね。」
Γ……とんだガキだな。」
目を伏せて苦笑したルシウスは、ローレンが濡らしたタオルと着替えとお金を差し出すと、躊躇しながらも受け取った。
Γ……王様、終わったよ。」
Γありがと」
レオが、かざしていた手を下ろしたのを見てローレンは頷いた。
Γさあ、行け。レオに港まで翔ばしてもらって、できるだけここから遠くに行けよ。」
Γおそらくリュカには既に気づかれているはずだ。すぐに捕まるだろう。」
体を拭き、着替えを終えたルシウスのもっともな言葉にも、ローレンは冷静に返す。
Γ大丈夫、僕の命令はリュカには絶対だ。勝手なことをしたから、離宮での謹慎を言い渡している。加えてそこから一歩も出ないように、魔法で翔ぶのも許していない。守れなかったらルルカから追放すると言っているから、リュカは動けないはずだ。」
なんたって僕に心酔して過保護で溺愛してるからなあ、と顔をしかめるローレンに、今度こそ呆れた顔でルシウスはふらりと立ち上がった。体力はまだ回復していない。
Γそう言えば、初めて俺と会ったと言ったな?」
Γえ?」
黒い髪をフードで隠し、ルシウスはちらりと悪戯っぽい目を王に向けた。
Γお前が赤ん坊の頃、顔に落書きされたことがあっただろ?」
Γえ?ああ、髭が描かれて…まさか」
Γあれは俺だ。」
Γぶほっ!」
瞬間、腹を抱えてローレンは爆笑した。レオが首を傾げて驚いて見ている。
Γははっ!あれ、君か!ルルカ七不思議の一つ、謎が解けたよ!」




