結末の果て5
ローレンは、見張りの兵達を鋭く見た。
Γ…ここはいいから、上へ行っててくれないかな?」
つい冷たい言い方になった。彼らの気持ちもわかるので、怒りを抑えているつもりだ。
兵達が気まずく一礼して去るのを確認してから、ローレンは鍵を開けさせた牢に入って行った。
Γルシウス」
酷い。
意識を失い倒れた彼は、呼吸がか細く傷だらけだ。横に屈んで座り、後ろに連れて来た子どもを振り返り、手招きする。
Γレオ、傷の手当てを!」
Γ怖いよお」
牢の前で立ちすくむレオに苛立ちながらも、ローレンは努めて優しく説き伏せる。
Γ大丈夫だから。怖くないよ。」
Γでも」
Γ君の力がいるんだ。ね?」
Γ……」
Γ君にしかできないんだよ。お願い。」
Γうん。」
内心溜め息を付いているローレンの隣に座り、レオはおどおどしながら、ルシウスの折れた右腕に手をかざした。
まだ慣れないのだろう。ローレンが見たところ、リュカよりも治癒に時間がかかるようだ。
数分かけて腕を癒し、体の目立つ傷をゆっくりと治す。
Γう…」
Γルシウス?!しっかりしろ!」
呻く彼の肩を揺さぶると、ルシウスが目を開いた。
Γ…こ、れは?お前…」
傷を治されていることに気付き、彼は驚いたようにローレン達を見ている。
Γお兄ちゃん、ごめん。時間かかって…まだ上手じゃないから。」
最初は怖がっていながら、治癒に集中し出したレオが、かざす手元を見つめて言った。
Γ……どういうつもりだ。ルルカの王。」
Γあ、わかるんだ。君に会うのは僕は初めてだけどね。」
肩から提げた袋を開けながら、ローレンは体を起こした彼をじいっと見た。
Γルシウス、君を逃がす。リュカに捕まらないように遠くへ行くんだ。」
Γ……まさか俺を助けるのか?お前の祖父を殺した仇を?」
ローレンがくすっと笑う。
Γ顔も知らない会ったこともない祖父が、殺されたからと言って、恨んだりするほど僕はいい子じゃないんだ。」
袋から、瓶に入った水をルシウスに渡す。
Γ僕はただ…打算と、ムカつくリュカへの反抗と、あとは君のこと嫌いじゃないから助けたい…だけなんだけどな。」




