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すぐにサヨナラ?4

ふと目が覚めた。まだ夜中だ。

私はあの後、まだたくさん彼と話がしたかったのだが、うるさいから寝ろと言われて渋々毛布をひっかぶった。


明日ルーに帰してもらう。帰ったら、カッコいい魔法使いのこと、弟に冗談混じりに話そうなんて思いながら、いつの間にか寝ていた。


「…あ、れ?」


体を起こしてみると、ベッドの上だった。焦って辺りを見回した。ルーはいなかった。

もしかして、代わりにソファーで寝てるのかな?

いつの間に運んでくれたんだろう。


迷ったが、ベッドを下りた。

突然の異世界。なんだかんだで世話を焼いてくれる彼。その姿が見えないと、途端に心細い。

リビングに行こうとして、ふとベッドの傍の窓を見た。


「ルー?」


外の小庭から、森の方へ歩く彼の姿が微かに見えた。こんな時間に何処へ行くのか、なんて考えるより早く、私は急いで玄関を出た。

ルーからもらったワンピースのまま眠っていたから、そのまま後を追う。

森には、山へと続く道がある。日中散策して確認済みだ。

あっという間に、ルーの姿は見えなくなった。声を出して名を呼んでみようかと思ったが、それを音にする前に飲み込む。


なんだろう。何か嫌な予感がする。静かな闇夜に、遠くで微かに何か聞こえた気がした。


急に不安になり、私は彼を追うために駆け出した。


**********************


パチパチ…パンッ


木のはぜる音。

ルーが、また腕をかざした。その手に黄色い炎が

踊る。彼がその手を迷うことなく払うと、また船が火を噴いた。

十隻ほどだろうか。全ての船が燃えている。

焦げ臭い風が、彼の長めの前髪を上げた。


ルー!


顔を上げた彼は、冷たい笑みを浮かべていた。

燃える船を、愉しそうに見ている瞳は、紅い宝石のように妖しく輝いていた。端正な顔が炎に照らされ、ゆらりと浮かび上がる。



近寄りがたく、私はただ彼を見つめていた。衝撃で震える膝に座り込もうとした。

だが突然、腕を掴まれて立たされた。


「初めまして。」


気配もなく、長い黒髪の男が近くにいた。


「やはり貴様の仕業か。」


ルーは、落ち着き払ってこちらを向いた。

濃青のシャツが風で緩くはためいた。

私に目を向けてから、紅い瞳を直ぐに逸らした。逃れるような素振りは気のせいか。


「彼女を迎えに来たのです。さすがに、貴方の結界が張る自宅には入り込めないので、そこから出てくるように仕向けさせてもらいました。」


そう言うと背の高い男は、私の腕を持ったまま、いきなり膝をついた。


「えっ?」

「ミヤコ、私はリュカと言います。貴女を召喚したのは私です。」


にこりと中性的な笑みで、私を見上げ、手の甲にキスをした。


「ひゃあ」

「なっ?」


驚いたのは、私だけではなかったみたいだ。

でも、その後もっと驚いたけれど。


リュカは嬉しそうにこう言った。


「貴女を召喚したのは、私の特殊な魔法である予知により、貴女が次の最高の魔法使いになることが決まっているからです。予知から17年、ずっと貴女を待っていました。」






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