結末の果て4(ルー視点)
Γ…う…」
どうやら熱があるようだ。身体がふらついて、硬い床に横になった。身体中にある傷が、じんじんと疼いて痛みが酷い。
まいったな…
折れた右腕が腫れて赤黒くなっているのが視界に入る。
魔法使いだった時には、傷など痛みを感じるよりも早く治癒していたというのに。人間の体のなんと脆いことか。
Γこまっ、たな…」
このままだと、死ぬかもしれない。
死ねば…
ぐっと目を閉じる。
自分はどうしてしまったのか。
魔法使いとしての誇りも力も命も、何もかも捨て去っても後悔はない。それなのに、ミヤコのことだけが頭から離れない。
未練だな。
相手はこちらのことなど忘れているというのに。もう会えないのに。
最後に見せた彼女の微笑んだ顔が忘れられない。
リュカに言ったことは本当だ。苦しくて抜け出せないでいる。
こんなことなら、初めから会わなければ良かったのか。
Γ…ミヤ…コ」
そうじゃない。俺は、こんなにも苦しいのに幸せなのだ。
ほんの数ヶ月の共に過ごした日々。
自分が記憶するミヤコの声、豊かな表情。甘い匂い、柔らかな肌…強い意思、温かな心。
その記憶が、俺を苦しめ慰め、常に救う。
だから生きていける。どんなに堕ちようが、惨めであろうが、這いつくばって生きていたい。
勝手な俺は、一方的にミヤコを想い続けたいがために生きることを止めない。
それなのに、体は限界を叫んでいる。
意識が朦朧となり、体が寒い。
ああ、渇く。
心が渇いて悶えるようだ。
燃えて焦げ付いて、どうにかなりそうだ。
お前のいない世界で、また一人になった。
手放し、記憶を消したのは自分だというのに、俺は浅ましくもお前に餓えてばかり。
ミヤコ、俺は未だにお前を求めてばかりだ。




