表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/207

結末の果て3

私は藤川都。

高校三年生になった。理由がやむを得ないものだった為、出席日数が足りないところをテストを受けて進級を許された。

そりゃあ、必死で猛勉強したよ。授業に追い付くまで本当に大変だったんだから。


行方不明になった騒動の後、初めて登校した時はかなり緊張した。家の前や校門前にはマスコミがいたり、クラスの皆の好奇の視線も辛かった。


でも、比較的田舎の高校。一学年三クラスで、ほとんど顔を知ってる。初めは私にその時のことを聞きたがっていた皆も、私が全く記憶が無いことがわかってからは、少しづつ普通に接してくれるようになってきた。一ヶ月もすれば、私が行方不明になったことなど触れもしなくなった。


たぶん、気を使ってくれているのかもしれない。マスコミも鳴りを潜めてしまった。ただの家出で取り上げるほどじゃないと考えたのかもしれない。


Γ都、すぐ帰るの?」

Γうん、お先に。」


ファミレスに寄る友達と別れて、一人で帰ろうと手を振る。

校門を出た所で、後ろから呼ばれた。


Γ藤川、待って。」

Γえ?」


息を切らして自転車を押した竹山君がやって来た。


Γ一緒の方角だし、途中まで帰っていい?」

Γあ、うん。」


ドキリとして頷く。正直気まずい。去年の秋、私は彼から告白されて断ったのだから。


Γ藤川、もう体調は平気?」

Γう、うん。ありがとう。」


言葉少なに二人で歩く。長いなあ、道。


Γ記憶…、やっぱりないの?」

Γうん。」

Γそっか。」


三年で同じクラスになった竹山君。気が優しくて、落ち着いた大人びた雰囲気の彼は、結構もてるらしい。


三差路に来た。


Γあ、私こっちだから。」

Γうん。藤川、あの…」


鼻の頭を掻いて、竹山君が私に向き直った。なんとなく予想がついてしまい、私は俯いた。


Γ藤川、いなくなって凄く心配した。」

Γうん…ありがと」

Γいなくなって…、やっぱり、好きだなって気付いて…あきらめられなくてさ」


顔を赤くしながら、私を真剣に見ている。


Γもう一度、考えてくれないかな?俺と付き合うの…」

Γ…たけ…」

Γ藤川、前断った時、本当に好きな人がいるからだったの?断りやすいから、そう言ったのかと思って…」


Γごめん、なさい…」


迷うよりも、喉をするりと言葉が通っていった。


Γありがとう、竹山君。でも、ごめんね。」


がくりと肩を落として、彼は苦笑した。


Γやっぱりいるの?好きな奴。」


そう聞かれ、チリチリと胸が疼いて痛い。


Γ……うん。」


口をついた答えが、ストンと胸に落ちた。

記憶に無い行方不明だった時のこと、私は急に知りたくなった。


とてもとても大事なことを忘れている。それだけを感じた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ