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あなたに笑顔を2(ルー視点)

何も話さなくなり、固く目を閉じてしまったミヤコ。


Γ許さない」


俺を置いていくなど


僅かに茫然としていた俺は、一つだけミヤコを救う可能性に思い至った。

迷ってる暇はない!


自分の治りかけた傷は血が止まってしまったので、自らの人差し指と中指を順に強く噛みきった。じわじわと血が滲む二本の指で、空中に独特の紋様を描く。

魔法使いであれば、生まれた時から備わる知識。

だが強い魔力がなければ、発動しない召喚魔法。


俺は喚ぶのではなく還すために、それを行使する。ミヤコを元の世界に還す。

以前人間の治療をした時、ミヤコが悔しそうに言っていたのを思い出した。

彼女は、元いた世界の医療技術が、ここよりも百年以上発展していると言っていた。

ならば…


血で描いた複雑な紋様が、描いた先から金色に光り出し、俺とミヤコを囲むように淡く照らす。

徐々にそれが上へと昇り、遥か頭上で明るく輝き出す。

太陽よりも明るい光に照らされて、俺はミヤコの顔を見つめた。

血だらけで、青白い彼女は、それでも綺麗で…愛しかった。


Γ生きろ」


自らの口許に指を添えて、召喚魔法を発動させるべく口だけを動かし、決まった音を唱える。


それから彼女の耳元に、洗脳の言葉を流し込んだ。


これが最後。

血の滲んだままの指で、ミヤコの頬を撫でて、唇をなぞる。冷たい唇に熱を与えるようにキスをする。

俺の血と彼女の血が混じりあい、鉄の味がした。


ゆっくりと浮上して、ミヤコが俺の手を離れていく。

Γ…ミヤコ、愛してた。もう…泣くな」


まばゆい光に包まれて還っていくのを、切り裂かれるような胸の痛みを堪えて見届ける。

滲む視界に、目元を探ると、俺は涙を流していたことに気付いた。


やがて光が消えれば、元の闇が訪れた。


ミヤコに与えた洗脳。それはもう泣き虫な彼女が泣かないように、俺ができる最後の贈り物だった。


Γこの世界を忘れろ。俺を、忘れろ…」

別々の世界で

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